映画『愛と法 – Of Love and Law』

コトの発端は、iTohenで、鰺坂さんに、たまたまそこにいらっしゃった戸田ひかるさんをご紹介いたただいたことにあります。
このチャーミングな女性は、ヨーロッパを拠点に活動する映画監督なのでした。
そのときに手渡された、彼女が撮った新作映画のチラシには、僕がつひまぶでかつて取材させていただいたゲイカップルの「弁護士夫夫」がどーんと大写しになっており、その映画というのが、彼らの数年間を追ったドキュメタリー作品『愛と法 – Of Love and Law』なのでした。最近は積極的に映画情報を取りにいっていないので、たぶん、iTohenでの彼女との出会いがなければ、僕はこの映画を知らないままやり過ごしていたと思います。

大阪に暮らすゲイの弁護士夫夫(なんもり法律事務所のカズ:南和行弁護士とフミ:吉田昌史弁護士)の生活を通して、日本社会の生きづらさや多様性の大切さを伝えるドキュメンタリー映画です。つひまぶで取材したときにも思ったし、この映画を見てさらに思ったんですが、LGBT云々というよりも、その人そのものを真っ直ぐに見ようよ、多様性というのはそういうことでしょ、という彼らの思いと監督の思いが、あたりまえのように一直線でつながっているのが、この映画を見ていると、ビシバシと伝わってきます。というよりも、このふたりがゲイの夫夫なんだということを、映画の終わりのほうではすっかりと忘れてしまっていました。それくらい自然な振る舞いと描かれかただったし、このふたりは、家族になろうとしているのではなく、もう、普通に家族なんだなと、そんなふうに僕には見えました。

映画では、LGBT、養護が必要な子どもたち、無戸籍者、突然逮捕されたアーティスト、「君が代」不起立を貫く学校教師…。なんもり法律事務所とふたりを取り巻くさまざまな問題が登場します。どちらかといえばマイノリティと呼ばれる人たちが、裁判で闘っています。そんな彼ら彼女らを、カズとフミが支える姿が描かれます。
映画の中で、フミは、「自分がすごく苦しくて助けを必要としたときに、応えてくれなかった社会というものを信用していない、というのが頭のどっかにあるんです」と、訥々と告白するように話します。
保守というものが、現体制の延長線上に未来があると考える人たちなのだとしたら、リベラルな人たちとは、現体制を腹の底から信じることが困難なほどの傷を負っている人たちのことです。それでもなお、というところが、その人の生きざまになります。フミは、それでもなお、スーパーマンになりたい、と言っていました。その、それでもなお、というのが、僕は好きなんです。そこにこそ、その人そのものが表れます。いい映画でした。

映画は最後、ピアノの旋律が流れるなか、裁判の行く末や登場人物たちの最新情報が紹介され、やがてエンドロールが流れます。そのなかで、「音楽:前田雄一朗」というクレジットがスクリーンの下から上へと不意に流れていき、僕は、不意に、懐かしい名前に出会って、ビックリしたのでした。前田雄一朗君は、僕の古い友だちで、大阪での音楽活動を経て、10年以上、ヨーロッパで音楽活動をしている青年です。若いときから、僕は、彼の音楽をいろんな人に紹介してきました。僕自身もまた、彼の紡ぐ音楽に夢中になってきたのです。監督の戸田ひかるさんはロンドンを拠点に活動されているのだから、ヨーロッパで活動している前田雄一朗君とつながっていても、考えてみたら不思議なことではないのです。でも、ひとつの映画のなかに、最近知り合った監督がいて、主人公はつひまぶで知り合ったおふたりで、おまけに音楽はなぜか僕の古い友人が担当していて、なんか、僕の知らないところでみんなつながって映画が出来上がっているみたいで、変なかんじなのです(笑) さらに言うなら、映画の舞台になっているところは、扇町公園でのレインボーフェスティバルであり、南森町の交差点であり、天神橋筋商店街であり、梅田のヨドバシカメラ前であり、僕が毎日のように歩いている場所なのです。いつの間にこんなとこで撮影してたんや?と、撮影当時の監督とは知り合いでもなんでもないのに、思ってしまいます(笑)前田雄一朗君を知っている共通の友人にそんな話をしていると、「みんなそれぞれ、活動してるということやなぁ」と結論めいた言葉が出てきました。最近、そういうことが多いのだけれどもね。

とまあ、個人的なことも重なり、書くことはたくさんありますが、いい映画です。
『愛と法 – Of Love and Law』
第30回東京国際映画祭で日本映画スプラッシュ作品賞受賞作品
第42回香港国際映画祭最優秀ドキュメンタリー賞受賞作品
第42回サンフランシスコFrameline映画祭正式招待作品
第32回BFI FlareロンドンLGBTQ+映画祭正式招待作品
第16回ニッポン・コネクション ニッポン・ヴィジョンズ審査員特別賞受賞作品
です。
空中庭園の「シネ・リーブル梅田」で上映中です。まだ終映未定です。

シネ・リーブル梅田

前田雄一朗君の勇姿も貼っとこかな。

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