知識を得て、 心を開き、 自転車に乗れ。

これは、堂山町会が運営する駐輪場うめチャリの壁面の一角です。
この地域では迷惑駐輪が後を絶たず、昨夜も迷惑駐輪撤去に立ち会い、啓蒙活動をおこなうわけですが、一方で、町会で駐輪場を運営するという、全国でも唯一ではないかと思われる事業を展開しています。150台収容。今では、夕方から夜にかけてはほぼ満車の状態が続いています。
そのうめチャリが開業してまもなく、壁面という壁面が落書きされたんです。下手くそなグラフィティウォールアート(なんで、街の落書きのグラフィティウォールアートはことごとくレベルが低いんだろう?)で、まあ、消すしかないような代物ですよ。で、みんなで手分けして白ペンキで消したんですが、消してみるとですな、デカくて真っ白な、落書きにはうってつけのキャンバスができてしまったのですよ。キレイにはなったけど、これはまた絶対に落書きされるぞ!と。
そこで、僕たちはその壁面に絵を描くことを考えたんです。力のある絵が描かれていれば、その上から落書きされることはなかろう、と。そう考えたわけ。
でも僕らは絵心がないし、どうするべ?と八方手を伸ばして探していると、ECCの保健室の先生が絵を描いてくれることになって、まず、原画と下絵を描いてもらいました。堂山にはいろんな属性の人たちがいるから、いろんな人が共生している様子がわかるような絵にしたい、という思いがあって、それを絵にしてもらいました。それを下絵にして、僕たち素人の集団が絵を描いていったんです。ど素人のヘタウマの絵なんか街に出現させるな!って、まちづくり系の人たちやまちなみウオッチャー系の人たちに散々文句言われながら、絵を描いていったんです。今思い出したけど、なんかめちゃくちゃに文句言われたぞ、ネットで。何もしないくせに、文句だけはすごかったなー。2014年の春のことです。
でも僕は、この場所の絵を描く仕事を、ひとりのアーティストに委ねようとは、まったく思っていませんでした。ヘタでもヘタウマでもいいから、みんなで描くことを重視していました。それは全員参加が望ましいという行政の大好きな手続き論からではなくて、描いた人は、自分が描いた絵の行く末が気になるのだから、たくさんの人がかかわればかかわるほど、その後を気にする人も自動的に増えることになり、言葉を変えれば、その場所が落書きされないように目を光らせる人が増える、ということです。そのために、たくさんの人の参加は必須だと考えていました。
そうやって、このうめチャリの壁面は賑やかな絵で埋め尽くされ、以後、現在に至るまで落書きひとつされていません。

さてそのとき、僕はこの壁面にひとつの思いを込めました。
一角に、

Get the knowledge!
Free your mind!
Ride your cycle!

という言葉を、記しました。

知識を得て、
心を開き、
自転車に乗れ。

知っている人は知っているだろう、ソウルフラワーユニオン(この曲の発売当時はニューエストモデル)のイケイケの曲「知識を得て、心を開き、自転車に乗れ」に出てくる歌詞の一節です。タイトルは日本語で、歌詞の一節では英語で登場します。
僕は、このフレーズを使わせてくれ!と、ソウルフラワーユニオンの中川敬君にtwitterでコンタクトをとり、行け!と許可をもらって、このフレーズをこの壁面に記したんです。それも、DMで二人だけのやり取りにせずに、リプライを飛ばして、公開の元で、彼とそんなやり取りをしました。

情報を手に入れたら、部屋こもっておらずに、行動しろ
と、このフレーズは言っています。

最近、まちづくりのいろんなことに関わっていて思うことがあります。
人と人がつながることはとても大切だし、関わっている人たちの合意形成も、とても大切です。
でもね、そのうえでなお思うのは、たとえひとりになったとしてもオレはやるよ!というような、強い覚悟を持った、腹をくくった人が、ひとりでもいるかどうか、そのほうがはるかに大切なんじゃないか、ということです。信なくして立たずと言うけれども、ただ合意のための合意なら、それは成功しないんじゃないかな。

ひとりであっても、自転車に乗って漕ごうとする人がいるかどうか。
仲間を得て一緒に自転車を漕ぐことはとても大切。でも、仲間がいなくても、たったひとりになったとしても、オレは自転車に乗るよ、というのが、行動力というものの正体ではないか、と、僕は思ったりもするのです。
そんなことを考えながら、

Get the knowledge!
Free your mind!
Ride your cycle!

と、あのときに記した壁面を、今日久しぶりに見てきました。下手くそな字だけどさー、大切なことが書いてあるよ。


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