山下達郎のフィルムコンサート

自粛明けのZeppなんばがまず最初に狼煙をあげたのは、シアター・ライブだった。
いろんなミュージシャンのライブ映像を上映するもので、第一弾は山下達郎だ。
今、僕の中では山下達郎がマイブームだったので、これはいいや!と思って、約2時間の上映2500円のチケットを買って、Zeppなんばへ。
今、感染拡大防止という点では、ライブハウスはかなり安全な場になっていると思う。
間隔を空けての入場、入場時の検温、手指消毒、マスク着用、換気はあたりまえ。
1つおきの座席使用にして、人数を半分にして、歓声なし。
チケット購入がオンラインで一度に1枚しか買えず、2枚以上買う場合は1枚ずつ購入手続きを踏むので、必然的に集団で固まれるような座席配置にならず、ホール内でのおしゃべりが生まれにくいようにもなっている。
要するに、そこらへんの居酒屋よりはるかに安全なのだ。
さて山下達郎である。
山下達郎が音の狂気の人で、ごく控えめに言っても天才中の天才だということくらいは、もちろんわかっている。
コンポーザーとしてもエンジニアとしてもプレイヤーとしてもボーカリストとしても、ついでにリスナーとしても超一級品だということはわかってる。
ライブを観たことはないけれども、いい意味で力を抜いて歌う人だと勝手に思っていた。いやー、スタジオ盤を想像していたらエラい目に遭うな。こんなにもアグレッシブに歌う人だったのか。まるで肉食獣だ。あんな叫びに近いエモーショナルな歌いかたで、それでいてたぶん編集時にピッチは修正されていないだろうから、考えられない歌唱力だわ。そして、ギターのカッティングのキレイなことよ。あれ、フェンダーでないと出せない音やね。さらに山下達郎がマスタリングしてるのだから、爆音であっても音質が悪いはずがない。
スタジオ盤ですら遙かな高みにあるのに、山下達郎の真髄はライブにあるのだな。いやー、あれほどのスタジオ音源が吹っ飛ぶライブ。しかもこれ、生じゃなくて映像やからね。や、動いている山下達郎の映像なんて、極端に少ないのだから、映像だって貴重なのだ。テレビ出ないし、MVにすら本人登場しないし。
2010年代のVaporwaveでの発掘をきっかけに、山下達郎をはじめとする日本のシティポップは世界的な再評価の波にあるけれども、そんな流れとは関係なく、やっぱこの人は神です。90年代以降のレアグルーブやアーバンブルースの申し子たちも大好きだけれども、やっぱ、この人を前にすると敵わない。山の稜線の高さが、まるで違う。
4000人以下のキャパでないとライブをやってくれないし、映像が少ないから、動いている達郎を見ることは滅多にない。その意味でも、今回のシアター・ライブは行ってよかったな。
20年分の活動から約15ツアーのライブ映像を厳選、たぶん25曲くらい、2時間。
ハイライトは『希望という名の光』だった。
この曲は2010年にリリースされ、2011年の東日本大震災のときに、リリース時に込めたものとはまったく違う意味を与えられて、多くの人の耳に届いた曲だ。
山下達郎は、1億の日本人に希望を届けることはできないけれども、僕のファン、今日ここに来てくれたひとりひとり、2500人のひとりひとりになら、ほんの少しは希望を届けられるかもしれないと言い、全身全霊で魂を込めて歌うと言っていた。
2500人、という数でなく、ひとりひとりが2500、という捉えかたなのだ。
山下達郎クラスだとドームでやってくれないとライブに行きたくても行けない人が大量にあふれる。事実、今でも抽選に当たるのは難しい。それでも、ひとりひとりと対峙できるキャパを、彼は大切にするのだろう。誠実な人だ。
あと、追伸。
ランナーの皆さんに告ぐ。
山下達郎の音楽は、ランニングのお供にとても向いています。
遠からず近からず適度な距離感で鳴ってくれるし、なによりもリズムがいいので、足が軽やかに前に出る。僕は最近、走るときは山下達郎ばっかり聴いてる。

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