チャリンコに乗ったえべっさん兄弟の引札

むかしの引札を見てたら、明治期のんで、グッとくるのを見つけた!
「引札」とは、広告のチラシですな。
木版画の登場でアートの大量生産と低価格化が実現して、錦絵(多色刷り木版画)としての浮世絵が生まれ、ポップ・カルチャーが誕生する。音楽におけるレコードの誕生とおんなじやね。ポップ・カルチャーの醍醐味は複製品による爆発的な広がりにあるので、その意味では浮世絵もレコードも役割はおんなじ。
浮世絵が美人画、役者絵、名所絵とエンタメ業界・観光業界の販促ツールなら、その次に出てきた「引札」は、よりダイレクトに商品を広告する販促ツール。

盟友のむしまつさんが、引札の本を引っ張り出してきて、少し解説してくれた。
この引札のように、えべっさんはじめ、弁慶や牛若丸、日吉丸(太閤さん)、赤穂浪士、浦島太郎などの万人が知るキャラクターが登場するケースが多い。これらが描かれた引札を手にした人々は、手元に置き、部屋に貼り、描かれた人物を見ながら子どもたちに道徳や歴史を教育したり、物語を語って聞かせたりした。その過程で広告の品が刷り込まれていく。現代の広告が有名タレントを起用するのに似てますな。
日清・日露戦争ももちろん庶民にとって関心が高かったので、モチーフになった。いつの世も勝ち戦は人気がある。
また、人物だけでなく、文明開花によって登場した汽車や自動車、飛行機、自転車、郵便、電話、蓄音機もモチーフになった。
この引札にチャリンコや機関車が描かれているのはそういうことで、機関車が煙の代わりに小判を吐き出しているのは、文明が富を象徴しているということなのかもしれない。

と、引札について一般的なことはわかるのだけれども、問題はこの引札。
この引札は明治期の発行物で、まあまあの多色刷りで、グラデというかボカシも入ってるスグレモノ。
気になってしゃーないのは、図案。
チャリンコ。チャリンコに乗ったえべっさん兄弟…。
兄弟でスポーツウェア着てるし、「魁 勉強」のフラッグ背負ってるし、兄弟の後ろから機関車が煽り運転してるし、煙突から小判吐いてるし。とりあえず、図案がシュールすぎる。
ほんで、万国旗が、日の丸、帝国旗、イギリス、アメリカ、オーストリア。
オーストリア??
1873年(明治5年)日本のウィーン万博への参加
それか?
で、「万綿類仕入所」とあり、「脇 種三郎」とある。脇 種三郎て、誰よ??
組み合わせた結果がいろいろシュールすぎて、誰か解説してくれんことにはさっぱりわからん。だけどおもろい。

チャリンコについて調べてみると、
日本に自転車が初めて持ち込まれたのが慶応年間。
1870年(明治2年)日本でも自転車の製造が開始される
1881年(明治14年)第2回内国勧業博覧会に出品される
1885年(明治18年)完全国産化1号
1898年(明治31年)自転車競技大会が開かれ、大変な人気を博し、貸し自転車が流行する
この頃までは自転車は男性だけの乗り物で、女性が乗るようになったのは大正期から。女性の社会進出の象徴となる。「はいからさんが通る」やね。

というわけでわからんことも多いけど、目下の興味は、引札に向いている。

コメント

タイトルとURLをコピーしました