「ボストン美術館コレクション」

ボストン美術館コレクション
美術家の辻惟雄が再評価して以来、僕は曾我蕭白に魅せられっぱなしです。
でもこの人、日本画のメインストリームから外れているせいもあってか、作品が一堂に集まるということがないですね。なんちゅーても、フェノロサやビゲローが日本で大量に買い付け、それらはボストンに安住の地を与えられたのだから。。。
今回、狩野派の作品と並べられたことで狩野派の影響を受けていることがわかったけれども、それでも、圧倒的にオリジナルですわ。
今回の展示のアイコンにもなっている「雲龍図」の尋常でないパワー! 普通なら誰も気にしないような部分にやたら力が入っているおかしな趣味、およそ変態でなければなしえない天才的な構図の絶妙さは、誰の目にも明らかです。なんだってこれをボストンに持っていかれるかなー。
これ以外にも、「楼閣山水図屏風」「鷹図」「風仙図屏風」「虎渓三笑図屏風」…、写真でしか見たことのなかった作品が次々と目に飛び込んできます。
さらにその一角には伊藤若冲が「動植綵絵」とおなじ手法で描いたと思われる、あの執拗に精緻で、絵画でしかなし得なかったような美しさをたたえる「鸚鵡図」と、晩年の軽妙洒脱な「十六羅漢図」が鎮座しています。
そしてですな、彼ら奇才の系譜とメインストリームを埋めるかのように、狩野派の大胆なタッチの作品群がこれでもかと並びます。
さらにさらに、ダイナミックの極みとでも呼ぶしかない、尾形光琳の「松島図屏風」、長谷川等伯の「龍虎図屏風」が、とてつもない存在感と煌めきを放ちながら、そこに鎮座しているのですよ。
これ、どれもこれも、日本国内に保管されていたら、それだけで国宝級ですね。
こんなもんが、同時に、いちどきに並ぶなんて、ちょっと例がないです。贅沢の極み。
まだあります。
快慶作「弥勒菩薩立像」を含む、20余体の仏像。奈良、平安、鎌倉と仏像製作の黄金時代をあまねく網羅したこれらの仏像群は、もちろんどれも初見なのだけれども、どれも異様なほどの完成度です。
フェノロサが日本で活躍したのは明治のころ。維新政府のお雇い外国人として東京大学で教えていたわけですが、その時代は、廃仏毀釈の時代。日本の仏教が最も迫害された時代です。その時代にあって日本の仏教美術に光をあててくれた彼の功績は計り知れませんが、その時代だったからこそ、こんだけのレベルの高い仏像群を国外に出すことができたんでしょうな。これらのいくつかは、国宝指定されてもなんらおかしくないような完成度です。
ほいで、これで終わらないのが今回のコレクションのすごいところで。
どれもこれもが単体で美術展が成立するような目玉ばかりですが、まだあるのですよ。
「吉備大臣入唐絵巻」全4巻、「平治物語絵巻 三条殿夜討巻」全1巻。この2種の絵巻の展示です。
吉備真備は阿倍仲麻呂と空海をつなぐ、その中間の時代に遣唐使として唐に渡った人だけど、入唐までの厳しさと唐の中枢に食い込んでいくまでのさまが、マンガチックに描かれています。超能力あり、囲碁の対決ありで、物語の楽しさと鳥獣戯画にも通じる筆の楽しさが同居していて、なにやら活劇のようです。これらが、全長24メートルの絵巻で展開されます。
一方で、「平治物語絵巻 三条殿夜討巻」は源義朝が三条の後白河上皇を拉致するという、武士の台頭のきっかけとなった乱ですな。群れをなす火炎、武士、公家、女房、俥が精緻に描かれており、ドキュメンタリーを見るような趣です。
とまあ、とんでもないコレクション群が一堂に集まってます。
ほんまにね、長いあいだ、これらの作品を見にボストン美術館へ行きたいなーと思い続けていたのですよ、僕は。
たぶん、こんな規模でやってくることは、もうないでしょうな。
見ないと一生の損、だと思いますよ。
大阪市立美術館での「ボストン美術館コレクション」は、残りわずか。
6月16日(日)までです。

ボストン美術館コレクション

ボストン美術館コレクション

ボストン美術館コレクション

ボストン美術館コレクション

ボストン美術館コレクション

ボストン美術館コレクション

ボストン美術館コレクション

ボストン美術館コレクション

ボストン美術館コレクション

大阪市立美術館

大阪市天王寺区茶臼山町1-82
http://www.osaka-art-museum.jp/

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