夜の伏見稲荷大社

伏見稲荷大社

全国に3万以上はあると言われている、神社界の最大勢力、お稲荷さんの総本山である伏見稲荷大社。
なんちゅーても、HPのドメインが「http://inari.jp/」ですからねっ!
さて、お稲荷さんは、稲とあるとおり、もともとは食物の神さんである宇迦之御魂神(うかのみけつのかみ)と同一視され、けつ=キツネとなりますから、御魂神→三狐神と解して、狐がお稲荷さんの眷属であるとされたわけです。最初は食物や農耕の神さんでしたが、中世以降、工業・商業が盛んになるとそっちの神さんにもなり、今では産業全般の神さん。よく、企業のビルの屋上なんかにも祀られています。
お稲荷さんにかぎりませんが、神社は原則、24時間解放されていて、閉門時間というのがありません。そもそも、門がなくて、鳥居ですから。だから、総門があるところは、ごくごく少数です。
その伏見稲荷も、お昼間に行くと、いつ行っても大賑わいです。
神社ははやり、喧噪を逃れた清浄の場所であるべきなんでしょうが、ご利益のあるところは、なかなかそうはいかないですね。
でも、そんなお稲荷さんでも、夜に参拝すると、静寂に包まれた空間を堪能することができます。
伏見稲荷大社の夜は、なかなか芸術的な夜のしじまです。
写真ではなかなか伝わらないかもしれないですが、ここの夜は、少しドロッとしているような気がします。
夜にしか泳げない、異界の有象無象が蠢いているような、静かな喧噪があります。
例の延々とトンネル状に連なる鳥居の列は、異界への入口であるかのような怪しい気配を放ちます。
背筋をピンと伸ばしてたたずむ狐は、今にも目を光らせて躍動しそうです。
装飾としてのライトアップではなく、道しるべのようにして設けられている照明が、地面に光と影の文様をつくりだします。
僕の周りには、何人か、夜の伏見稲荷大社が好きという人がいますが、今回訪れてみて、その意味が少しわかったような気がします。
日本の神々は、八百万、つまり森羅万象に宿っているといいます。
稲荷の山の鳥居、稲荷の山を歩いていると、さまざまな種類の樹々があり、虫が鳴き、具象の洪水であるかのようなこの地はやはり、八百万という感覚を自然と持つなあ、実感します。
対話する相手は、無数にいます。
静かな喧噪のぶんだけ、相手はいます。
そのような相手と対峙することによって、自身の某かを見い出し、自身がかたちづくられていくのだな、と、そんなことを思う夜なのでした。

Flickrに画像あります。
伏見:夜の伏見稲荷大社(2013.10.5)

伏見稲荷大社

京都市伏見区深草藪之内町68
http://inari.jp/

コメント

タイトルとURLをコピーしました