聖林寺の十一面観音

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奈良は桜井の安倍文殊院と談山神社のあいだの、山に入ったあたりにある聖林寺。
白洲正子が、長浜の渡岸寺と双璧を成すと評した十一面観音が、ここには安置されている。
ずっと、拝みたいと思っていた観音さんで、このたび、ようやくそのご尊顔を拝することができたのだった。
流れるような美しさをたたえた十一面観音さんで、蕾の蓮花を左手に持っている。観音菩薩は、修行中の身で完全に仏の境地に達していない、いわば人間と仏の中間にいる存在だけれども、この仏像が生まれた天平時代は、律令国家が一応は完成し、次の世代へ移ろうとする転換期でもあった「咲く花の匂うが如き」時代であり、また、咲く花が散りかかろうとする危機もはらんでいた時代で、そういう時代に出現した十一面観音さんなので、単に、新鮮というのは当たらないと思う。そこには、爛熟と頽廃の兆しも表れていて、泥の中から咲き出た蓮のように、それらの色に染みながらも、なおかつ初々しさを失っていない素晴らしさが、この観音さんにはある。

本堂に安置された子安地蔵は、江戸時代に住職が走りまわって7年の歳月をかけて刻まれた巨大な石仏で、江戸時代らしいキッチュな趣をたたえていて、一種、異形の相をしている。傍にいらっしゃる釈迦三尊とのコントラストがとても鮮やかでいい。

小高い山を登った甲斐あって、この本堂から見下ろす下界の眺めは抜群で、山の稜線がとても優雅。
鄙びた具合もほどよく、とても、とてもいいお寺さん。

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聖林寺

奈良県桜井市下692

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