■仏像の基礎知識

如来
釈迦如来
阿弥陀如来
薬師如来 七仏薬師
毘盧舎那如来
大日如来
五智如来
阿閃如来
不空成就如来
宝生如来
仏頂・仏母
一字金輪仏頂
大仏頂
仏眼仏母
菩薩
観音菩薩(観世音菩薩) 聖観音(正観音)
十一面観音
千手観音
馬頭観音
准胝観音
如意輪観音
不空羂索観音
六観音
三十三観音
弥勒菩薩 勢至菩薩
地蔵菩薩
延命地蔵
文殊菩薩 稚児文殊
僧形文殊

五台山文殊
渡海文殊
普賢菩薩 普賢延命菩薩
虚空蔵菩薩 五大虚空蔵菩薩
日光菩薩・月光菩薩
薬王菩薩・薬上菩薩
金剛薩た菩薩
五大力菩薩
般若菩薩
大随求菩薩
二十五菩薩
明王
不動明王
五大明王 降三世明王
軍荼利明王
大威徳明王
金剛夜叉明王
烏枢沙摩明王
八大明王
愛染明王
太元帥明王
孔雀明王
梵天
帝釈天
四天王 持国天
増長天
広目天
多聞天
金剛力士・仁王・執金剛神
吉祥天
鬼子母神(訶梨帝母)
韋駄天
歓喜天(聖天)
摩利支天
閻魔天・閻魔大王
大自在天
羅刹天
荼吉尼天
伎芸天
十六善神
七福神 弁才天
大黒天
寿老人
福禄寿
布袋
恵比寿
毘沙門天
兜跋毘沙門天
諸尊
薬師十二神将
十王・十三仏
羅漢
八部衆
二十八部衆
賓頭盧尊者
迦陵頻迦
祖師
維摩居士
天邪鬼

■曼荼羅の基礎知識

両界曼荼羅
金剛界曼荼羅
退蔵界曼荼羅
別尊曼荼羅
法華曼荼羅
阿弥陀曼荼羅
釈迦曼荼羅

note

■持物
仏像が手にもっているものを持物(じぶつ)と呼ぶ。仏像によってさまざまであり、それぞれに意味がある。また、持物により仏像の種類を見分けるキーポイントにもなる。
代表的なものが蓮華。泥の中から生じても泥に染まらずに清らかさを保つことから、汚れることのない仏の真理(智慧)に例えられる。
宝剣
houken
宝剣 不動明王などの明王、天が持つ、煩悩を断ち切る智慧の刀。
錫杖
shakujou
錫杖 地蔵菩薩が六道をめぐる象徴として携帯する。
薬壺
yakko
薬壺 薬師如来が持つ薬の入った壷。
水瓶
suibyo
水瓶 汚れを払う水が入っているとされ、菩薩が持つ。
宝珠
houju
宝珠 地蔵菩薩や吉祥天などが持ち、財宝をもたらしたり、災いを除くとされる。
金剛杵
kongoushou
金剛杵 明王や天が持ち、煩悩を打ち破るとされる。鈷の数で名前が変わる。
羂索
kensaku
羂索 これを投げて衆生をもれなく救う。不動明王、千手観音、不空羂索観音などが持つ。
蓮華
renge
蓮華 煩悩に汚されない清らかさを示し、観音菩薩の象徴となっている。
三鈷杵
sankoshou
三鈷杵 明王や天が持ち、煩悩を打ち破るとされる。
羯磨
katsuma
羯磨 明王などが持つ武器で、智の象徴とされる。
宝塔
houtou
宝塔 多聞天や毘沙門天が持つ、仏舎利(釈迦の遺骨)を納めた塔。

■三十二相
足下安平相 足が扁平足
足下千福輪相 足の裏に千福輪という吉相がある
長指相 手と足の指が長い
足踵広平相 かかとが広く平らである
手足指縵網相 手足の指のあいだに水掻きがある(漏れのないように という意味)
手足柔軟相 手足が柔らかい
足趺高相 足の甲が高い
鹿王延膝相 膝は鹿のようにしなやか
正立手過膝相 立つと膝まで手が届く
陰蔵相 性器は身体内に隠されて見えない
身広長等相 身長と手を横に伸ばした距離が同じ
毛上向相 毛は上向き
毛孔生青色相 毛穴には青毛が生えている
金色相 全身が金色に映える
丈光相 身体の周りに一丈ほどの光がある
細薄皮相 皮膚は薄くつややか
七処平満相 頸、肩、腰はまろやかで肉付きがよい
両腋隆満相 腋の下も肉付きがよい
上身獅子相 上半身は獅子のように立派
大直身相 身体はすっきりとしている
肩円好相 肩は丸みをおびている
四十歯整相 歯は40本あり歯並びもよい
歯斉相 歯は大きさが均等で隙間がない
牙白相 上下4本の犬歯は白く美しい
獅子頬相 頬も獅子のよう
味中得上味相 食べるものは最高の味
広長舌相 舌は身体を覆うぐらい長く広い
梵声相 声は梵天のように5種の声が出せる
真青眼相 眼は青く、紺青のよう
牛眼睫相 牛王のように美しい眼
肉髻相 頭にこぶがあるように盛り上がっている
白毫相 顔の眉間に一丈五尺で右巻の白い巻毛が生えている(仏の知恵を表す)

■光背
如来や菩薩は身体から偉大な智慧の光を放つと言われており、この光は隅々にまで届き、一切衆生(あらゆる生物)を救うと考えられている。これを後光・光背と呼ぶ。といい、よく「後光が差す」というような表現をします
光背は、大きく分けると、挙身光と頭光に分けられ、挙身光は仏像の全身から放たれる光で背後に表され、頭光は頭から発する光で頭上に表される。
輪光
rinkoh
輪光 円形の輪で表す。
任生光
mibukoh
任生光 像の部分を椅子の背もたれのような形につくり、その上に二重の円光をつけ、その中心から幾筋かの放射光を表現している。
宝珠光
houjukoh
宝珠光 如意宝珠を表す。
飛鳥時代に流行した。
火焔光
kaenkoh
火焔光 燃え盛る炎を表す。
舟形光背
funagatakouhai
舟形光背 仏像の全体を覆うように、通常は一枚の蓮華の花をかたどっている。
二重円光
nijuuenkoh
二重円光 二枚の円形の板で表す。
放射光
houshakoh
放射光 放射状の光を表現する。
円光
enkoh
円光 一枚の円形の板で表す。ガンダーラなどの初期仏像に多く見られる。
飛天光
hitenkoh
飛天光 周囲や表面に飛び交う天女を表現している。

■東アジアでつくられる仏像の製作技法
金銅仏
kondohbutsu
溶かした青銅を型に流し込んで造る鋳造像で、表面には、鍍金(金メッキ)を施。
型には、鑞・土・木などがあり、金銅仏が最も流行した飛鳥〜天平時代は鑞が主流だった。土で原型をつくり、そのうえに鑞をかけ、彫刻を施す。この鑞型を土で覆って焼くと、鑞だけが溶けて、空洞が出来、そこに溶かした銅を流し込む。冷却後に外側を壊すと彫刻が現れるというもの。
青銅以外の、金・銀・鉄仏も同様の方法で造られる。
金や銅が高価なため、費用や歳月、高度な技術が必要で、奈良時代末期以降はあまり造られなくなりまったが、鎌倉時代に入り再び多く造られるようになった。
乾漆像
kanshitsuzoh

漆を厚く塗り固めて造る。日本の乾漆像の大半は7〜9世紀に集中し、その他の時代にはほとんど制作されていない。漆が高価で制作に手間がかかることが、作例の少ない理由とされている。写実的で質感表現に富むのが最大の特徴であり、製作技法には2種類ある。
脱乾漆
datsukankanshitsu
粘土の型のうえに麻布を漆で十数回塗り固めて、造形する。乾燥後に像を割り、なかの土を取り除いて新たに木芯を入れて塞ぐ。空洞部分が多いので、軽量なのが特徴。
木心乾漆
mokushinkanshitsu
木で原型を造った上に麻布を漆で張り固めたもの。重くてがっしりしており、作業工程も少なく、また高価な漆も少なくてすむという利点がある。
塑像
sozoh
粘土で造る。盛り上げて造形する技法の代表で、白鳳〜天平時代に流行し、鎌倉時代に入って再び造られるようになった。木を組んで心木をつくり、縄を巻いてから土を2〜3層に分けて盛り、造形する。最後に彩色して仕上げ。
写実的表現に優れ、制作費が安いのが利点だが、壊れやすいのが最大の欠点。
木彫像
mokuchouzoh
一本の木材から造る一木造と、干割れを克服した割矧造、数本の木材をを組み合わせて造る寄木造に大別される。日本の仏像の大半は木彫像。
一木造
ichibokuzukuri
奈良末期から平安前期に多く造られ、文字通り一本の木材のみで完成させる方法。充分に乾かさないと、乾燥による収縮差から表面に干割れが出るのが最大の欠点である。この欠点を克服するために、内刳りといって、仏像の内部を空洞化したが、完全に刳り抜くことは不可能で、干割れの問題は残ったまま。
割矧造
warihagizukuri
一木によりほとんど完成された像を楔で頭上から足底までを縦に前後の二つに割り、割った断面から内刳りすることで、均一な内刳りが出来、その後に木目に合わせて再度接合する。こうすることで、表面の干割れを完全に止めることが可能になったが、この行為は大胆で畏れ多い手法ということもあり、次第に敬遠されていった。
寄木造
yosegizukuri
いくつかの木を組み合わせて完成させる方法で、干割れを完全に克服出来、これによって合理的に巨大な像を短期間に完成させることが可能となった。宇治平等院鳳凰堂の阿弥陀如来は定朝がこの手法を完成させた代表的な例として、あまりにも有名である。なお、寄木造りは日本彫刻史に残る画期的なものとして評価されている。
石仏
sekibutsu
石で造った仏像で、その場所にある岩や石に直接彫刻する場合と、切り出してきた石を彫刻する場合の2通りある。

■釈迦の五印
釈迦のある特定の行為に伴う身振り・手振りから生まれたものと言われている。
降魔印
goumain
降魔印 釈迦が悟りを開いた後、悪魔を追い払ったときのポーズ。金剛界の阿閃如来もこの印相をとる。
転法輪印
tenpourinin
転法輪印 釈迦が説法したときのポーズ。
禅定印
法界定印
zenjouin
禅定印 釈迦が悟りを開いたときのポーズで、心の安定を表す。
法界定印は胎蔵界の大日如来での呼びかた。
施無畏印
museiin
施無畏印 説法を聞く人の緊張を和らげるポーズ。
与願印
yoganin
与願印 仏の深い慈悲を表す。

■法隆寺釈迦三尊像
法隆寺釈迦三尊像

■脇侍
脇侍とは、如来の両側に立つ菩薩のことで、如来が衆生を救おうとするのを助け、人々を導く役割を果たしている。

■四方仏
仏教では、東西南北に仏国土(仏の世界)があり、それぞれにその仏国土を治める仏が一体ずついると考えられている。
北に「未来仏」の弥勒菩薩、
南に「過去仏」の釈迦如来、
西に「現在仏」の阿弥陀如来、
東にも「現在仏」の薬師如来
が配されています。
阿弥陀如来は現在仏だが、西方はるかの極楽世界の教主であり、人がこの世を去るとき極楽浄土に迎えてくれる。
薬師如来は瑠璃光世界の教主で、瑠璃光とはこの世のことであり、今この時代でご利益を授かることができると考えられてる。
なお、過去仏、現在仏、未来仏の分類に関しては、宗派や経典または寺院によって諸説ある。

■九品来迎印
阿弥陀如来特有の印相。
阿弥陀如来は極楽浄土にから迎えにくる際、人間の能力や信仰の程度によって、九つの段階に分け、その人にふさわしい印を表わす。
ちなみに、上品、下品はこの印相の名前に由来している。
上品上生 上品上生
上品中生 上品中生
上品下生 上品下生
中品上生 中品上生
中品中生 中品中生
中品下生 中品下生
下品上生 下品上生
下品中生 下品中生
下品下生 下品下生

■薬師如来十二大願
相好具足 光明によりすべてを完成する
光明照被
瑠璃の光明ですべてが成就する
所求満足 あらゆる生きものが自由自在に活動出来るようになる
安立大乗 仏道に導く
具戒清浄 地獄に落ちないように指導する
諸根具足 障害を持つ人の身体が正常に戻る
除病安楽 どんな病気でもすぐに治す
転女得仏 女性であることを望まない人を男に変える
安立正見 煩悩に苦しむ人を解放する
苦悩解脱 悩みことを持つ人を解放する
飽食安楽 飢えに苦しむ人も、美味しいものを飽きるほど食べられる
美衣満足 貧しく服も着られない人も、美しい衣服を着られる

■仏像のご利益
釈迦如来 悟りを開かせる
薬師如来 病気平癒、とりわけ眼病。合わせて12の大願がある
阿弥陀如来 極楽への往生。敬愛。重病人の延命祈願
毘盧舎那如来 すべての仏尊のご利益の本源く
大日如来 一切成仏。密教における最高仏であり、すべての仏尊のご利益の本源
阿閃如来 病気平癒
聖観音 除災。また阿弥陀如来の脇侍であることから、臨終には極楽から 迎えにきてくれる
十一面観音 除災、除疫。あらゆる方向からの願いを聞き入れる
千手観音 敬愛、除病、破地獄(地獄からの救済)
不空羂索観音 難事成就、美容
如意輪観音 福徳、良縁、子授け、安産
馬頭観音 畜類救済、息災、降伏
准胝観音 安産、延命、夫婦和合、聡明
文殊菩薩 知恵、学問
普賢菩薩 滅罪
勢至菩薩 阿弥陀如来の脇侍であることから、直接のご利益よりも、如来の救済力を盛んにするとされている。家内安全、除災招福
虚空蔵菩薩 記憶力増強、福徳、知恵、学問。仏智悟入
地蔵菩薩 無仏時代(現代)の守護。子授け、子育て、滅罪。夜明け直前に拝むとご利益があるという
弥勒菩薩 釈迦の後継者なので、未来を救済する
日光・月光菩薩 除病。日光菩薩は病根を焼き、月光菩薩は苦熱を除くとされる
薬王・薬上菩薩 薬をもって病苦から救う
五大明王 息災延命、調伏
不動明王 煩悩・悪行を滅する
降三世明王 悪霊・怨敵を降伏させる
軍荼利明王 除災
大威徳明王 一切降伏
金剛夜叉明王 悪を打ち砕き調伏する
烏枢沙摩明王 不浄を除く、病患、渇水。トイレの仏様
愛染明王 敬愛(左手に意中の人の名を書いて持たせれば、恋愛が成就する)、 息災、降伏
太元帥明王 護国、怨敵降伏
孔雀明王 祈雨、天変地異、蛇除け、解毒
梵天 仏法守護、戦勝
帝釈天 仏法守護、戦勝
四天王 仏法守護
吉祥天 福徳、滅罪、天下泰平、五穀豊穣
歓喜天 夫婦相愛、子授け
摩利支天 戦勝
荼吉尼天 福徳、敬愛
伎芸天 芸能成就
毘沙門天 福徳、戦勝
弁才天 学問、技芸、戦勝、福徳
鬼子母神 子授け、安産、子育て、除病、除災、商売繁盛
大黒天 衣食守護、戦勝、除災
福禄寿 長寿
寿老人 長寿
布袋 寛容な精神
恵比寿 商売繁盛
金剛力士 仏法守護
八部衆 仏法守護
薬師十二神将 薬師如来の大願成就
二十八部衆 千手観音の本誓守護

■薬師寺薬師如来
薬師寺薬師如来

■仏像の姿勢
基本的に立像、坐像、臥像の3種類がある。
立像・坐像はその名のとおり、立っている姿、座っている姿を表わす。
坐像にはいろいろな種類があるが、台に座ったものを通称倚坐と呼ぶ。
臥像は釈迦の涅槃の様子を表したもので、横に寝そべっているもの。
善跏倚坐 善跏倚坐
両足を揃えて踏み下げて台に座る。
半跏倚坐 半跏倚坐
右足を曲げて左膝の上にのせて台に座る。菩薩のみに見られる。
輪王坐 輪王坐
片膝を立てる。
吉祥坐 吉祥坐
左足を右足の太股に、右足を左足に密着させる。
逆なら降魔坐。
降魔坐 降魔坐
右足を左足の太股に、左足を右足に密着させる。
吉祥坐の逆。
半跏趺坐 半跏趺坐
片足だけを反対側の太股につける

■薬師十二神将
薬師如来の12の眷属で、84000あるうちの上首に位置する。十二薬叉(夜叉)大将とも呼ぶ。『薬師本願功徳経』を誦持する者を守り、薬師如来の十二の大願に順応して現れる。
宮毘羅 kubira
伐折羅 basara
迷企羅 meikira
安底羅 anchira
摩尼羅 manira
珊底羅 sanchira
因陀羅 indara
婆夷羅 baira
摩虎羅 makora
真達羅 shindara
招杜羅 shotora
毘羯羅 bikara

■七仏薬師
善名称吉祥王如来
宝月智厳音自在王如来
金色宝光妙行成就王如来
無憂最勝吉祥王如来
法海雷音如来
法海勝慧遊戯神通如来
薬師瑠璃光如来

■東大寺大仏
東大寺大仏

■台座
もともとは釈迦の居場所を表すものだったが、後に仏像に威厳と安定感を与えるものとして重要な役割を果たすようになった。
雲座
unza
雲座 雲の上に蓮華をのせたもので、主に飛天、阿弥陀如来に見られる
蓮華座
rengeza
蓮華座 東大寺大仏が基本形とされ、大仏座とも呼ばれる。
蓮の花は清らかなるものとされ、如来や菩薩が乗っている
宣字座
須弥座
senjiza
宣字座 如来が乗る台座で、仏教世界の中心である須弥山をかたちどっている
荷葉座
kayoza
荷葉座 梵天、帝釈天、吉祥天などが乗り、岩座の上に蓮の葉を伏せておいた形が一般的
岩座
iwaza
岩座 一般的に天部像が乗り、岩の上に邪鬼がいて天がそれを踏みつけている像が多くある

■金剛界と胎蔵界の大日如来の法界定印
法界定印胎蔵界の大日如来 法界定印胎蔵界の大日如来
左の掌の上に右手の甲を重ね、両方の親指を軽く触れ合わせる形で、最高の悟りを表現している。宇宙の一切の存在や現象は、母胎のような大日如来に優しく包み込まれている。
智拳印金剛界の大日如来 智拳印金剛界の大日如来
左手で親指を中に入れて人差し指を立てた拳をつくり、その人差し指の第一関節から上を右手の拳で握り込む形で、最高の判断力である智を表現している。大日如来の智慧が何物にも傷つかない強さを表している。

■東西南北に四体の如来を安置する
金剛界の安置例
金剛界の安置例
退蔵界の安置例
退蔵界の安置例

■六波羅蜜
布施 施しを与える
持戒 戒律を守る
忍辱 何事にも耐える
精進 努力する
禅定 真理を見極めるため智慧を磨く
智慧
般若波羅蜜
物事の本質を見抜く

■菩薩とその他の仏像の着衣と装身具
阿弥陀如来
阿弥陀如来

十一面観音菩薩
十一面観音菩薩

不動明王
不動明王

持国天
持国天

■十一面観音
前3面 菩薩面 穏やかな顔。
慈悲を表わす。
左3面 瞋怒面(忿怒面) 悪人を戒める。
右3面 狗牙上出面 優しい顔で人々を励ます
後1面 大笑面 大笑いして悪行を笑い飛ばす。
頂上 仏面 仏道に入った人に教えを説く。

■千手観音
千手観音

■三十三観音
楊柳観音 楊柳の枝を持つ。病苦から救う
龍頭観音 雲中の龍の背中に乗る
持経観音 岩座に座り、手に経を持つ
円光観音 岩座に座り合掌する
遊戯観音 雲上で左ひざを立てて座る
白衣観音 白い布をまとう
蓮臥観音 蓮華に座り合掌する
滝見観音 断崖に座って滝を見る
施薬観音 岩座に座り、右手を頬にあてる
魚籃観音 手に魚籠を持つ、または大きな魚に乗る。除毒、魚供養
徳王観音 岩座に座り杖を持つ
水月観音 蓮華の上に立ち月を見る
一葉観音 水上の蓮華に左膝を立てて座る
青頸観音 岩座に座り右手を膝に立てる。あらゆる恐怖と災難から救われる
威徳観音 蓮華を持ち岩の上から水面を見る
延命観音 岩に膝をつく
衆宝観音 右手を地につける
岩戸観音 毒蛇の住む岩戸に座る
能静観音 海辺の岩に座り手を岩にあてる
阿耨観音 岩座に座り滝を見る
阿摩堤観音 獅子に乗り、魚と果実を持つ
葉衣観音 勇敢な姿をして岩座に座る
瑠璃観音 香炉を持ち水上の水上の蓮華を持つ
多羅尊観音 雲の上に立つ
蛤蜊観音 はまぐりの前に座る
六時観音 経典(梵篋=ぼんきょう)を持つ
普悲観音 両手を隠し山上に立つ
馬郎婦観音 婦女の姿で「法華経」と頭蓋骨を持つ
合掌観音 蓮華の上に立ち合掌する
一如観音 雷を征服するように雲に乗る
不二観音 水上の蓮華に立つ(執金剛神)
持蓮観音 蓮華の茎を持つ
灑水観音 杖、灑水器を持つ

■兜率天
仏教の世界の中心にある須弥山のはるか上の神々の住む世界で、釈迦もこの世に生まれてくる前にはここに昇って下生の時期を待ったと言われている。弥勒も兜率天に昇り、現在はそこで諸天(神々)に教えを説きながら下生の時期を待っているとされている。

■六道と六地蔵
我々の住む世界(娑婆)は、六つの世界から成り立っており、地獄・飢餓・畜生上表の三つを三悪道、阿修羅・人間・天の三つを三善道とも呼ぶ。人間は人間界にいるが、この世で悪行を繰り返せば、畜生や地獄に生まれ変わり、善いことを積み重ねれば天(神々の国)に生まれ変わるとされており、これを六道輪廻と呼ぶ。
地蔵菩薩は娑婆世界を守ることが使命なので、この六道すべてを守護すると言われており、ひとつの世界に一体ずつ地蔵を配した六地蔵がつくられた。
六道 六地蔵 六地蔵の持物と印相
地獄 大定智悲地蔵
(地蔵菩薩)
宝珠、錫杖
飢餓 大徳清淨地蔵
(宝手菩薩)
宝珠、与願印
畜生 大光明地蔵
(宝処菩薩)
宝珠、如意宝珠
阿修羅 清淨無垢地蔵
(宝印手地蔵)
宝珠、梵篋
人間 大清淨地蔵
(持地菩薩)
宝珠、施無畏印
大堅固地蔵
(堅固意菩薩)
宝珠、経巻

■日本三大文殊
安倍文殊院(奈良桜井市)
切戸文殊(京都天橋立知恩寺
黒谷文殊堂(京都東山金戒光明寺)
に安置されている文殊菩薩を、日本三大文殊と呼ぶ。
五台山文殊の場合は、善財童子、優でん王、仏陀波利三蔵、最勝老人。
また、八大童子は、光網童子、宝冠童子、無垢光童子、髷設尼童子、烏波髷設尼童子、質多羅童子、地慧幢童子、請召童子。

■眷属
眷属とは、如来、菩薩、明王などに特定して従属する使者のことで、家来のようなものである。

■奈良安倍文殊院の文殊菩薩
奈良安倍文殊院の文殊菩薩

■五大力菩薩の名称と、主な持物
金剛吼 千宝相の輪
竜王吼 金輪灯
無畏十力吼 金剛杵
雷電吼 千宝の羅網
無量力吼 五千の剣輪

■二十五菩薩の尊命と持物
観世音 蓮台
大勢至 合掌
薬王 幢幡
薬上 玉幡
普賢 幡蓋
法自在王 華鬟
獅子吼
陀羅尼 舞いながら袖を持つ
虚空蔵 腰鼓
徳蔵
宝蔵
金剛蔵
金蔵
光明王 琵琶
山海慧 箜篌
華厳王
衆宝王
月光王 振鼓
日照王 羯鼓
三昧王 天華
定自在王 太鼓
大自在王 華幢
白象王 宝幢
大威徳王 曼珠
無辺身 焼香

■千葉成田山新勝寺の不動明王
千葉成田山新勝寺の不動明王

■八大童子
矜羯羅 kongara 肌白く合掌している
制多迦 seitaka 肌が赤く棒を持っている
慧光 ekoh 忿怒相で天冠をつけ、右手に五鈷杵、左手に月輪のついた蓮華を持つ
慧喜 eki 慈悲深い微笑で、右手に三股鈎、左手に摩尼宝珠を持つ
阿耨達 anokuta 龍王乗り頭に迦楼羅を乗せ、右手に独鈷杵、左手に蓮華を持つ
指徳 shitoku 三目の夜叉形で、甲冑をまとい、右手に三叉鉾、左手に輪を持つ
烏倶婆迦 ukubaka 童子形で五股冠をつけ、大笑いし、右手は挙印を結び、左手は金剛杵を持つ
清浄比丘 shoujoubiku 僧侶形で右手に五鈷杵、左手に経巻を持つ

■五大明王とその配置
五大明王とその配置

■十二天
十二天 方角 特徴
帝釈天 本文参照
水天 西 もとは天空の神、あるいは月の神として登場し、天上の法則を司り、全知の神として重要視された。ヒンズー教に入って庶民の間で信仰されるようになると、水神として信仰を集めるようになった。五龍冠という冠を頂き、右手に剣、左手に羂索を持って海中に座る。東京にある水天宮はこの神を祀り、信仰を集めている。
閻魔天 本文参照
毘沙門天 本文参照
火天 南東 火を神格化したもの。全身を火炎に包まれ、痩せて髭をぼうぼうに伸ばした四臂の老人で、四本の手のうち左手一本は施無畏印に組み、もう一本は念珠を持つ。右手の一本は仙杖を持ち、もう一本は水瓶を持つ。青牛、または青羊に乗る。
羅刹天 西南 本文参照
伊舎那天 東北 風力を神格化したもので、のちに大自在天、すなわちシヴァ神の化身と言われ、シヴァ神と同一視されるようになり、大自在天によく似た姿をしている。忿怒相で三眼を持ち、牙を上に突き出している。右手に三叉戟、左手に杯を持ち、牛に乗る。
風天 西北 風を神格化したもので、子孫繁栄、福徳、長命を授ける神として古くから信仰されている。右手に風幡という幡を持ち、左手を腰に当てた老人の姿で表され、くじかという鹿に似た動物に乗る。身体の色は赤で冠を冠り、甲冑を身につけている。
梵天 本文参照
地天 大地を神格化したもので、釈迦が悟りを開いたときにこの神が地中から出現して、釈迦が悟りを開いたことを証明したと言われている。像形は一定しないが、花を盛った器を手にしたものなどがある。
日天 日(昼) 創造力を神格化した抽象的な神であったが、のちにインドの太陽神であるスーリヤと同一視され、信仰を集めた。これが仏教に取り入れられて日天とり、観音菩薩の化身とされ、太陽はこの神の宮殿であるとも言われている。右手に蓮華を持ち、その上に三本足の烏が留る日輪を描く。また、曼荼羅中では五頭の赤馬の車に乗り、両手とも蓮華を持った天人形に描かれる。
月天 月(夜) 月を神格化したもので、勢至菩薩の化身と言われている。月輪、または半月杖という杖の先に半月のついたものを持ち、鵞鳥の上に乗っている。

■右が天女系の鬼子母神
右が天女系の鬼子母神

■薬師十二神将
十二神将 十二支 持物
宮毘羅大将 子・亥
伐折羅大将 丑・戌
迷企羅大将 寅・酉
安底羅大将 卯・申
額璽羅大将 辰・未
珊底羅大将 巳・午
因達羅大将 午・巳 棍棒
波夷羅大将 未・辰
摩虎羅大将 申・卯
真達羅大将 酉・寅
招杜羅大将 戌・丑
毘羯羅大将 亥・子

■裁判の日
裁判の日 十王 十三仏
死後7日 秦広王 不動明王
死後14日 初江王 釈迦如来
死後21日 宋帝王 文殊菩薩
死後28日 五官王 普賢菩薩
死後35日 閻魔王 地蔵菩薩
死後42日 変成王 弥勒菩薩
死後49日 太(泰)山王 薬師如来
死後100日 平等王 観音菩薩
死後1年 都市王 勢至菩薩
死後3年 五道転輪王 阿弥陀如来
死後7年 蓮上王 阿閃如来
死後13年 抜苦王 大日如来
死後33年 慈恩王 虚空蔵菩薩

■福島県岳林寺の十六羅漢
福島県岳林寺の十六羅漢

■十大弟子
舎利弗 智慧第一。特に釈迦の信頼が厚い。しかし釈迦の入滅より早く亡くなったという。
大迦葉 苦行第一。釈迦入滅後、実質的な後継者として活躍した。
須菩提 解空第一。仏教の中心思想「空」について精通していた。
迦旃延 広説第一。教えをわかり易く説くことに長じていた。
羅候羅 密行第一。おごることなく規律を守った。
目建連 神通第一。舎利弗とともに二大弟子とも呼ばれる。バラモンの修行者に殺され釈迦の入滅前に亡くなった。
阿那律 天眼第一。釈迦の一番上の従兄。修行中に居眠りして叱られ、以降不眠を誓って実行し、失明した。
富楼那 説法第一。仏法の真理を理解させるのに長けていた。
優波離 持律第一。戒律に精通し、厳しく順守した。
阿難 多聞第一。釈迦の従弟で、釈迦の説法を誰よりも多く聞く機会に恵まれた。

■八部衆
天部の総称
蛇を神格化した信仰(大海に住み、雲をよび雨を降らす魔力を持つと信じられていた人面蛇尾の半神)から、ナーガ族が仏教徒になったときに仏教に取り入れられて、護法善神となった。
夜叉 もとは空中を飛行して人に害を与える凶暴な鬼であったが、釈迦の説法を聞いて仏教に帰依し、守護神となった。興福寺の例では、甲冑を身につけて凶暴な顔をした鳩槃荼が夜叉を代表している。また、毘沙門天あるいは増長天の眷属と言われ、北方または南方を守護する。大般若経を守護する十六善神の一人にもなっている。単独では、東寺または六波羅蜜寺の夜叉神立像として遺っている。
阿修羅 天部にあらざる者の意味で、悪鬼の総称であったが、その悪鬼的性格が仏教に取り込まれてから、毒をもって毒を制するの意味をもって、護法善神に昇格した。興福寺像はその切ない表情であまりにも有名。
乾闥婆 神々の飲料水である蘇摩酒の守護をしていたが、仏教に取り込まれてからは帝釈天の眷属として、音楽をもって仕えるとされている。獅子の冠を冠っている。
緊那羅 歌神、楽神と漢訳され、元来、美しい歌声をもつ鳥を神格化させたものと考えられており、古代インドではヒマラヤに住み、妙音を奏で、諸仏菩薩あるいはすべての衆生を感動させた神とされていた。仏教に取り込まれてからは、毘沙門天の眷属として、その性格のまま継承されている。頭に一本の角があり、三眼を持っている。
迦楼羅 金翅鳥、食吐悲苦声とも言い、翼を広げると336里あるとされ、口から火を吹き、毒蛇を常食としている。仏教では毒蛇は煩悩に例えられることから、煩悩を食いつくすありがたい鳥とされている。密教では梵天が衆生を救うために、迦楼羅の姿で現れるとされ、また文殊菩薩の化身とも言われている。興福寺の八部衆では鳥頭人身、鎧をつけた二臂像になっており、他に半鳥半人の二臂像で翼を持ち、両手で蛇を踏みつけるものもある。
摩ご羅伽 腹這いで進んでゆく大蛇を神格化したものと考えられ、仏教に取り込まれてからは、音楽神の性格が与えられている。曼荼羅には描かれるが、彫刻の作例はほとんど見られない。

■三十三間堂の二十八部衆と持物
那羅延堅固 naraenkengo
大弁功徳天 daibenkudokuten
緊那羅王 kinnaraoh 羯鼓
金色孔雀王 konjikikujakuoh
大梵天王 daibontenoh 薬壺
乾闥婆王 kendatsubaoh 転法輪
満善車王 manzenshaoh 槌・蛇
沙羯羅竜王 shagararyuoh 剣・蛇
金大王 kondaioh 独鈷
金毘羅王 konpiraoh 弓・矢
五部浄 gobujo 剣・短剣
神母天王 jinmotennoh 銅拍子
東方天 touhouten
毘楼勒叉天 birurokushaten 独鈷
毘楼博叉 birubakusha 三叉戟・独鈷
毘沙門天 bishamonten 三叉戟・宝塔
迦楼羅王 karuraoh 横笛
摩和羅女 mawaranyo
難陀龍王 nandanyuoh
婆藪仙人 basusennin 経巻・杖
摩醯首羅王 makeishuraoh 鳥杖
毘婆迦羅王 bibakaraoh
阿修羅王 ashuraoh
帝釈天王 tashakutennoh 豊鏡
散脂大将 sanjitaisho
満仙人王 mansenninoh 三叉戟・独鈷
摩ご羅王 magoraoh 琵琶
密遮金剛 misshakongoh

■性格による曼荼羅の分類
自性の曼荼羅 現像世界そのものを曼荼羅世界とみる曼荼羅
観想の曼荼羅 瞑想によって観想される曼荼羅
図絵の曼荼羅 仏、菩薩の尊形を実際に絵図として描いた曼荼羅

■表現方法による曼荼羅の分類
大曼荼羅 仏の尊形によって表現された曼荼羅。「大」とは本質的なものという意。
三昧耶曼荼羅 尊形ではなく、蓮華や法輪など仏を象徴するもの(三昧耶形)によって表現された曼荼羅。
法曼荼羅 仏を象徴する文字である梵字によって表現された曼荼羅。種子曼荼羅とも呼ぶ。
羯磨曼荼羅 「羯磨」とはカルマ(業)、活動、事業を意味し、仏像、鋳像などの立体仏で表現された曼荼羅。

■五輪の塔婆図
五輪の卒塔婆

■金剛界曼荼羅の構造
大日如来の智慧の世界を表現している。
金剛界曼荼羅の構造

■九会とその概要
成身会 joushine 智拳印の大日如来を中心に、阿閃、宝生、阿弥陀、不空成就の五智如来をはじめとする金剛界三十七尊を含む1061体が描かれる
三昧耶会 sanmayae 73尊を、持物を象徴的に描く
微細会 misaie 金剛界三十七尊をはじめ、73尊が描かれる
供養会 kuyoue 73尊が描かれるが、それぞれ蓮華の上に持物をとったかたちで描かれる
四印会 shiine 智拳印の大日如来を中心に、13尊が描かれる
一印会 ichiine 智拳印の大日如来のみ描かれる
理趣会 rishue 金剛薩た菩薩を中心に17尊を描く
降三世会 gousanzee 智拳印の大日如来のほか77尊が描かれる。このうち十六大菩薩はすべて降三世印を結ぶ
降三世三昧耶会 gousanzesanmayae 金剛界三十七尊をはじめ77尊が持物を象徴的に描かれる

■十二院とその概要
中大八葉院 chuutahachiyouin 蓮弁を広げた形で、法界定印の大日如来を中心に9尊が描かれる
遍知院 henchiin 七倶胝母(准提観音)など7尊が描かれる
持明院 jimyouin 無動尊(不動明王)など5尊が描かれる
蓮華院 kannonin 観音菩薩をはじめとする21菩薩と、十六使者を従え、計37尊が描かれる
金剛手院 kongoushuin 金剛薩た菩薩など33尊が描かれる
釈迦院 shakain 説法印の釈迦如来を中心に、39尊が描かれる
虚空蔵院 kokuzoin 虚空蔵菩薩を中心に28尊が描かれる
文殊院 monjuin 文殊菩薩を中心に25尊が描かれる
蘇悉地院 soshitsujiin 8尊が描かれる
除蓋障院 jogaishouin 9尊が描かれる
地蔵院 jizoin 地蔵菩薩を中心に9尊が描かれる
金剛部院 kongoubuin 天部や龍など205尊が描かれる

■中台八葉院の仏像配置とその印相
中台八葉院では、赤い八葉蓮華の中心に大日如来を描き、その四方に宝幢如来(東)、開敷華王如来(南)、阿弥陀如来(西)、天鼓雷音如来(北)の四仏と、その四隅に普賢菩薩(東南)、文殊菩薩(西南)、観音菩薩(西北)、弥勒菩薩(東北)の四菩薩を八葉蓮弁上に配している。
中台八葉院の仏像配置とその印相
中台八葉院の拡大図
中台八葉院の拡大図

法華曼荼羅