1.17の夜

1.17の朝5:46の三ノ宮の東遊園地を目指して、毎年夜通し歩いている。
マラソンをはじめた昨年からは、大阪から三宮までの35kmを走るようになった。
途中、日付が変わって誕生日を迎えて、55歳になった。
26年前の震災のとき、友人を迎えに行ったり必要なものを持っていったりと、大阪と神戸を何度も歩いて往復した。大阪からだと、尼崎あたりまでは車が走れて、そっから先は道路が寸断されていたので、歩いていた。みんな、アリの行列みたいにして歩いていた。いつの時代やねん、というかんじで。
星の夜があったり、粉雪が舞う夜があったり、連絡がついたあとに迎えに歩いたり、当てもなく歩いたりもしたけれども、もう、あんまり覚えていない。覚えているのは、夜歩いていたことくらいだろうか。昼間のイメージがあまりない。
しばらくして、長田のオジィやオバァらと仲良くなり、みんなでルミナリエに行ったりするようになったのも、あたりまえだけれども、夜だ。
当時、ソウルフラワーユニオンのモノノケ・チンドン隊がよく青空のもとで演奏をやっていて、でも、僕が行ったのは、長田神社の境内に篝火を焚いての演奏だったので、やっぱり夜だった。もちろん彼らがこの時期につくった名曲『満月の夕』は、夜でしかありえない。あの頃の中川くんの歌いかたはなんだか粗い歌いかただっただけれども、震災から1ヶ月後の満月の夜にできたあの歌は、1ヶ月後だったからこそ、応援歌にはならずに鎮魂の歌だった。あたりまえだ。
後年、佐藤江梨子と森山未來が演じた『その街のこども』も、震災から15年後の夜の灘と神戸を往復するロードムービーだった。これも濃密で圧倒的な夜の神戸の空気が支配している。(この映画は、今でも毎年この時期に十三の「シアターセブン」で上演される。DVDは持っていても、何年かに一度は観に行く。)
そんなかんじで、僕にとっての神戸や震災は、夜のイメージがべっとりと脳裏に貼りついている。
今となっては、日常のなかで震災を思い出すことは、ほとんどない。忘れたいと思うこともなければ、忘れてはいけないと思うことも、ない。
それでも、この時期、歩こうと思う。走ろうと思う。
今年はコロナ禍ということもあり、ルミナリエも中止になったし、東遊園地での追悼イベントも半日早くスタートして密を回避したり、その他の場所では中止になったりしたところもあるらしい。
いつまでも昔のことに囚われているわけにはいかないし、新しい出来事が古い記憶を押し出してくれることで、僕たちは生き延びることができる。
それでも、だ。
それでも、この時期、歩こうと思う。走ろうと思う。
なぜそうするのかと問われれば、もう、はっきりとは答えられないくらいに、僕のなかでもいろんなことが曖昧になってきている。それでも。
道中、あの当時のことや、この26年のあいだに星になった人たちのことを思い出している。思い出して、走りながら、わんわんと大きな声を出しながら泣いていることもある。気がつけば、『満月の夕』を大声で歌いながら走っている。走りながらだから音程は安定しないし、走るのにも支障が出るくらいの大声だけど、夜通し走っていると、そういう瞬間が必ず訪れる。
変な話だが、そうやって大声で歌ったりわんわんと大泣きしたいがために、行き場のない感情を放出したいがために、この時間を過ごしているような気がする。だから、音楽を聴きながら走ってはいなくて、自分の息遣いだけを聴きながら走っている。
大阪や兵庫では緊急事態宣言が発令中なので、僕がいつも休憩したり着替えをしているマクドは、20時以降はドライブスルーだけの営業になっていた。それでも、車ではなくて歩いてテイクアウトを求める人がたくさんいて、ドライブスルーの窓口ではなく、店頭のカウンターが混んでいた。
一方で松屋は開いていた。ドンキも開いていた。2号線沿いのコンビニは数年前はファミリーマートが多かったけれども、今ではセブンイレブンが大勢を占めている。
東遊園地のお祈りの場では、毎年、県立舞子高校の生徒さんたちが点灯の先陣を担ってくれていたけれども、一昨年からいない。
スタバは毎年無料でコーヒーを振る舞ってくれていたけれども、これももう見ない。
マスコミは東遊園地の頭上にドローンを飛ばしていた。
南側の関電ビルは、今年も「1.17」の文字になるように部屋の灯りをつけてくれた。
コロナ禍で、今年は初めて紙灯籠が登場した。人が集まれなかったゆえに竹灯籠は半分しか作れず、竹灯籠と紙灯篭が半々になった。そして、紙灯篭は16日の夕方に点灯されたらしい。密回避とのこと。
そうやって変わりながらも続けてもらえることは、ありがたい以外の何者でもない。
感情の高ぶりや、変わってしまった風景や、今のこの状況や、いろいろあるけれども、今回も気持ちよく35kmを一気通貫で走りきった。
さて、今日は誕生日メシをゴチになってきます。明日も、一昨日も誕生日メシをいろんな人に振る舞ってもらえて、僕はつくづく果報者です。
緊急事態宣言発令下なので、ひっそりこっそりと、果報に与っております。
コロナ禍やらなんやらで、しょっちゅう心折れそうになるけれども、今年も、楽しく元気にやります☆
みなさん、よろしく。
お誕生日のコメントをくれたみなさん、この場を借りて御礼申し上げます。

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