『屋上のペーパームーン』

『屋上のペーパームーン』

このたび、くじら企画さんの公演『屋上のペーパームーン』の公演チラシをつくらせてもらいました。

普段はどちらかというとBtoBのカタいものをつくっていることが多く、演劇の公演チラシのような、エンドユーザー向けのしかもエンタメな広告物をつくることは滅多にないので、この年齢になってまだ新しいものにチャレンジできる機会を与えてもらえるのは、ありがたいことだなぁと思う。 

慣れないこととはいえ、どんな広告物であってもやることの基本は同じで、必要な情報を整理して、目線の導線を考えて、分かりやすく効果的に表現し、紙面に定着させることには変わりはない。
なんといっても、デザインの基本は、整理整頓なのだから。これは、どんな広告物であっても変わらない。
伝えたいことが効果的に伝わるように紙面に情報を配置し、装飾を施し、全体のトーンを作品の世界観にマッチするように整える。
そこは変わらないけれども、アート(表現)に特有の広告物の役割みたいなものがあって、それを頭や身体に入れるのには少し苦労したけれども、そのへんのことも無事にクリアして、このたび完成☆
いい勉強をさせてもらいました。

僕の仕事はあくまで請負なので、広告物を作っても通常は自分の名前なんて残らないのだけれども、こういう演劇のチラシには、「宣伝美術」担当として、自分の名前をクレジットしてもらえるのが通常のようだ。
こういうかたちで名前を出してもらうと、この演劇作品をつくる人たちの末席に加えてもらったような気がして、こそばゆいというか、ありがたいというか。慣れないので、とにかくお尻の座りが悪い。


くじら企画が上演する『屋上のペーパームーン』は、劇作家・大竹野正典による戯曲で、1973年に大阪で実際に起きた「ニセ夜間金庫事件」をモチーフにしている。2007年に上演され、以後、かたちを変え、キャストを変え、幾度となく上演されてきた作品だ。

大阪の雑居ビルの屋上に集まった、わけありの男たち。
社会から少しはみ出した彼らの目的は、偽の夜間金庫を使った一攫千金。
だが、計画はどこかズレていて、
騒動が絶えない。
ずさんな計画、見せかけの絆、
くだらないプライド…。
すべてがチグハグに交錯し、
夜の屋上に、薄く儚い「ロマン」が浮かび上がった。
笑っていいのか、泣いていいのか。
月は彼らを見下ろしていた。
まるで、
紙でできた偽物の月のように。


報われない日々、変わり映えのしないつまらない日々を脱して、一発逆転を夢見る。
現実は、そんなに劇的な展開を滅多なことでは許してくれないけれども、
そのなかで、かっこよさや希望を捨てずにいようとすること自体は、もはや一種の美学ともいえるのかもしれない。
だからこそ、その悲哀には、単なる「かわいそう」ではすまない、社会構造への問いや、生きづらさに対する深い共感が生まれるのだと思う。
かっこ悪くても、負けっぱなしでも、それでも生き続けるという姿に、希望のタネがあってくれと思う。
そういう男たちをワシは嗤うことなどできないどころか、愛おしく思う。
今回の仕事をいただいて、台本を読んだとき、そんな愛おしさがあったな。
一見、ピカレスクロマンな作品なのだけれども、そのじつ、そんな、愛おしいペーソスが感じられる作品だと思います。


日時:9月26日(金)〜28日(日)
会場:ウイングフィールド
(大阪市中央区東心斎橋2-1-27 周防町ウイングス6F)
チケット取り扱い(予約:こりっち)
https://ticket.corich.jp/apply/377533/
くじら企画
https://www5c.biglobe.ne.jp/~kujirak/


このたびの仕事を仲介していただき、アドバイスや叱咤激励など、陰に日向に力なってくださった小栗一紅さん、そして粘り強くチラシの制作にお付き合いしてくださった演出の後藤小寿枝さん、ありがとうございました。まさかのムーンライダーズ好き!は嬉しい驚きでした☆

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