飛騨は立山の立山信仰を図解した「立山曼荼羅」の絵解きをしていたら、おもしろいシーンがあった。
立山には山岳信仰があり、それは修験道における「擬死再生」がベースになっているが、女人禁制でもあるので、女性は山中修行に取り組めない。
そこで、ふともの寺で女人救済の儀式「布橋灌頂会」がおこなわれるのだけど、立山曼荼羅のひと隅に、その様子が細かく描かれている。

熊野であれ富士であれ、その土地の信仰の全体図を表した曼荼羅は、だいたい、布教のためのツールに使われる。こうしたビジュアルで示して、説法をし、信者を増やしたり寄進を募ったりする。
「熊野観心十界曼荼羅」も似たような役割を持つのだけど、「立山曼荼羅」同様、女性向けに描かれているのは、ちょっと興味深い。

よく考えたら、信仰の成立自体は平安だけど、絵巻の制作は、どちらも室町から江戸にかけてなので、その時代だと、仏教が庶民にまで広まっているから、庶民の女性も布教の対象になっていたということか。

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