レトロ・ロマン・モダン、乙女のくらし

「レトロ・ロマン・モダン、乙女のくらし」

大阪暮らしの今昔館に「レトロ・ロマン・モダン、乙女のくらし」を見にいく。
大正モダニズムを中心に、化粧品や薬、生活雑貨のパッケージ、雑誌表紙などから、女性が家庭内から外へと活動的に進出していく様を見るというもの。

いやー、充実の企画展でした。これで500円は安い!

まず化粧品ね。顔のメイクは飛鳥時代に隋や唐から伝えられたわけだが、お歯黒や白粉、剃り眉など、江戸時代には集大成されるわけ。ところが開国されると、急激に欧米心酔の風潮が世を覆う。
そんななか、「中山太陽堂」(現 クラブコスメチックス)が登場する。
「クラブ洗粉」でヒットを飛ばして、そっから広告に力を入れていく。初代社長の中山太一は広告王と呼ばれたのだ。今回、当時のチラシやポスター、パッケージが結構な点数で展示されていて、いや、こんだけの点数を一堂に見ることができたのは初めてですな。双子のおねーちゃんのキャラ、「クラブ」と命名されてのブランディング。東郷青児も一時期太陽堂の写真となり、絵を描いている。垂涎ものやね。どれもこれも、今現代の新作として全然通用するどころか、普遍やん。
中山太陽堂は出版業も立ち上げて、阪神モダニズムを担い手でもあった。

手間のかかる日本髪に代わる新しいヘアスタイルとしての「束髪」も提案されている。
ヘアカタログの役割を担ったプロマイドが展示されていて、これもいい。なんかみんな色っぽい。
「鬘付束髪」ってのは、エクステか?

もちろん、竹久夢二のものも登場する。楽譜集や婦人雑誌の表紙など。

雑誌「滑稽新聞」はかの宮武外骨が発行する風刺新聞。ユーモアに富んだイラストが描かれている。
「主婦の友 新年附録」「家庭教育双六」「少女幸福双六」は、どれもこれも時代の空気を反映してとても道徳的で、これまた当時の空気が見て取れる。かつ、描かれる女の人がべっぴんやなー。

資生堂は明治の創業から、例の花椿なんですな。

明治37年には鉛の入っていない無鉛の白粉が発売され、爆発的に売れている。
「大学白粉」「レート白粉」「クラブ白粉」など。

大正時代になると、百貨店の包装紙、ノベルティ、チラシ、ポスターなどに秀逸なものが登場する。
引札(チラシ)のレベルは群を抜いてますな。
昭和9年に心斎橋駅と大丸が地下通路でつながったことを記念してつくられたペーパークラフトは、橋爪紳也先生の研究室で見せてもらったことがあるぞ。

ほか、雑誌「女性」「苦楽」、シッカロールの登場とそのパッケージ、広告うちわ、タバコのパッケージ、レコード、日本初の国産ビールの渋谷ビールのラベル、キリンビール、お菓子、ビスコの缶、演劇の案内冊子、アールデコな味の素、口中香錠のカオール、月経バンドのメトロン、中原淳一…。これでもか!とモダニズムの洪水。

お好きな方にはたまらんかと。

企画展のチラシもいいし、それに付随するマンガの案内もよろし。
大正レトロモダンのカタログは書店にたくさんあるけど、中山太陽堂や渋谷ビール、仁丹、三越、大丸など、阪神モダニズムを軸にして展開する視点はこれまでになかなかなかったし、これは図録欲しいぞ!
https://www.osaka-angenet.jp/konjyakukan/exhibition_special/260000934

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