『まちのファンをつくる 自治体ウェブ発信テキスト』狩野哲也
カノさんが初の著書『まちのファンをつくる 自治体ウェブ発信テキスト』を出された。
少しずつ、毎日薬を服用するように読んでいたので、僕にしては珍しく1ヶ月近くかかって、読了。
カノさんとの付き合いはミクシィ時代まで遡るので、もう15年くらい前になるのかな。今となってはリアルで会うことは稀で、こち亀の日暮巡査並の遭遇頻度だけど、そんなリアル世界とは裏腹に、snsを通じて、折に触れて彼の動向はチェックしているのである。だって気になるし、ためになるから。謙虚な彼は年長者の僕に対しては弟分的な接しかたをしてくれるのだけれども、実際のところは、彼のほうが全然前を歩いている。前を歩いているから、気になるし、ためにもなる。
彼はこの本で、100もの自治体の情報発信のプロジェクトをひたすら紹介しまくっている。有名どころも混じってはいるけれども、ほとんどは、僕は知らないところばっかりだ。直方市って、どこよ? 沖縄の粟国村はよく知っているけれども、この本にあるような素敵なサイトを運営してるとは知らなんだ。そんなんが100個である、100個。僕も神社仏閣の紹介記事なら100個くらいは書けるかもしれないが、そこまでストックする時間と労力を鑑みると、自治体の情報発信100事例紹介は異常だ。女子バレーの地獄のレシーブ練習だ。というか、この本に紹介されているものだけで100個だから、この本に紹介されなかった水面下に没している事例が何個あることか。それらはすべてカノさんのアンテナに引っかかったもので、引っかかっただけでなく、そこから執念深く追いかけ、場合によっては中の人に直接取材すらしている。スマートに仕事をしているように見えて、カノさんは案外と泥臭く執念深く、引っかかったものを追いかけているようにも見えてくる。それが100個。量はある段階を過ぎると質を凌駕するというのは、とっくのむかしに手塚治虫が証明してくれている。それどころか、カノさんのこの本での仕事は、量だけでなく、質も担保されているのだ。
自治体で働く人は、異動があるために、良くも悪くもゼネラリストにならざるをえない。そんなキャリアステップのなかで、ろくな研修があるわけでもなく(←推測)、webによる、SNSによる情報発信を担わなければならないのは、少々酷だと思う。結局のところ、担当者の得手不得手ややる気、興味のあるなしに負うことになるので、組織でありながら、成否がとても属人的になってしまう。少なくとも、外からはそのように見える。
そこに、snsが登場したので極めて安価でできますよ!というキャッチフレーズだけがひとり歩きする。
僕は商店街関係の広報を仕事で担うことが多いが、その横で、どこからかコンサルさんがやって来て、「TikTokを使えばタダで動画情報が発信できますよ。当社でHPとTikTokを連動させる仕組みをつくって差し上げます。なーに、今なら補助金が出るので、商店街から申請していただければ、当方へお支払いいただく金額はたったの○○十万円で…」などと(例に漏れず、webに疎い)理事連中をそそのかしている光景を、よく目にする。
snsはタダで誰でも使えるかもしれないが、そのsnsの特性を理解してどんなふうに使いこなせばいいのか、なにを発信すればいいのか、といった肝心なことは、どこかに置き去りにされている。
誰でも使えるSNSを使えば、スピードとコースをコントロールしたスルーパスをFWに蹴ることはできる。でも、いつ誰にどんなスルーパスを蹴ればいいのかわかっていなければ、ゴールには結びつかないのですよ。つまり誰にも届かないマヌケな情報発信になってしまう。そんな事例がたーくさん横行するなかで、ひときわ光っているのが、カノさんの本だ。
成功事例100。
しかも自治体の人たちが受け入れやすい、「他の自治体が取り組んでます!」と言える事例が100なのだ。
コンサルに○○十万円とか○○百万円とか支払わなくても、たったの本体2200円+税で手に入るのだ。100の事例が。
山崎亮さんが「この本を悪用しないように(笑)」とオビに書かれているが、悪用せずとも誤用くらいはおそれずにやっていいと思う。なぜなら、「はじめの一歩」を踏み出すときにこそ、この本がもっとも真価を発揮するからだ。
自治体の広報担当だけでなく、地域活動や公益活動の広報を担う人たちも、ぜひ、この本を手に取るといいです。
ただし、一気に読むのではなく、少しずつ、自分にとって必要と思われる箇所から順に。そして、何度も何度も折に触れて、辞書的に使うこともできます。そのためにインデックスにも細やかな配慮が効いています。
カノさん、“使える”情報をありがとう!
カノさんのアイコンでお馴染みの日比野尚子さんのイラストもカワイイ☆
以下、カノさんの情報発信web関係。
『まちのファンをつくる 自治体ウェブ発信テキスト』特設サイト
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