奈良の斑鳩にある、慈光院。
聖徳太子ゆかりの飛鳥時代のお寺さんが並ぶ斑鳩にあって、まったく異質のお寺さん。
なんと、江戸時代建立の禅宗の寺院です。
江戸時代の武将にして石州流茶道の祖である石州が創建。
京にいる各地の武将をもてなすために、わざわざ人里離れた斑鳩の地に建立したのだとか。
もうね、参道の高〜い生垣からヤバいです。強烈な美意識に貫かれています。
参道に散らばる紫の花びらは藤で、見上げると、山藤が咲き誇っています。
一之門をくぐると、入母屋造、茅葺屋根の書院が、いいかんじに侘びたたたずまいで、迎えてくれます。
そして、書院から眺める枯山水の庭(奈良にあって枯山水ですよ!)は、書院が低く設計されているために、光と影のコントラストが強く、映画館でワイドスクリーンの映像を見るような趣です。
空と吉野山系を借景とした青、生垣の緑、枯山水の白州。その鮮やかな三層構造を、上下の漆黒で挟み込み、封じ込め、雄大な一幅の自然の絵画とします。差し色はサツキの赤、白、ピンク。
釈迦如来が祀られた本堂の天井には、なかなか立派な墨絵の龍が描かれています。これがまた、よく鳴く。柏手を打つと、ビリビリビリと反響します。
永遠にモダンな水玉模様の襖、五本松…、極めたもてなしの心映えがそのまま具現化したようなこの場所は、禅寺の範疇に収まらず、かといって趣味人の数寄の集大成でもなく、ちょっと不思議な空間です。それでいて、落ち着く。
中秋のころには、観月会も催されるのだとか。はるかに見える吉野山系から昇る月は、やがて、書院の天井に遮られます。遮られたとき、視線を下に移すと、池面にお月さんが映るのだとか。
どこまでも計算され尽くしています。
また行きます。
慈光院
大和郡山市小泉町865
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