大阪天満宮文化研究所所長の高島幸次先生の最新作『大阪天満宮と天神祭』が出てますな。
厄災が続き、既存の信仰への信頼が薄れ、新しい信仰が求められた機運のなか、菅原道真が非業の死を遂げる。
こうした一連の流れのなかで、天満天神を恐ろしい祟りを下す怨霊神と信じ、疫病退散を祈願する人々によって「天神信仰」が成立し、道真の怨霊を鎮める「北野天神」が創祀される。
それ以前、
北野の大将軍堂の隣地に一夜にして千本の松が生え、夜な夜な光り輝き、北野天満宮が創祀された。
この伝承を受けて、大阪に天満宮が創祀され、創祀の由来を説明するために、「千本松伝承」を〝リライト〟して、大阪天満宮の「七本松伝承」がつくられた。
両伝承から見えてくるのは、千本松は満天の無数の星を意味し、七本松は北斗七星のメタファーで、星に疫病退散を祈願する大将軍信仰をベースに天神信仰が成立する。
だから、「天満大自在天神」は大将軍神の星辰信仰を受け継いでいる。
大自在天はヒンドゥーの世界ではシヴァ神の化身だし、その証拠に水牛に乗っかっている。。。
天神信仰成立の背景には大都市・平安京の存在がある。
都市の形成により、照葉樹が伐採され、針葉樹林へと植相が変わっていく。
原生林から里山への変化は、宮崎駿が『もののけ姫』のテーマにもしていた。
大将軍社と天満宮の関係、天満大自在天神の信仰をベースとして天神信仰が成立するという菅原道真以前の天満宮創祀の話は高島先生の真骨頂で、これまでにも先生が主張されてきたことで、僕にはこの高島史観が一番得心がいく。何度読んでもスリリング!
前著『奇想天外だから史実』をさらにシャープにしたような本。
ページを行ったり来たりしながら、味わい尽くすように読んでいる。
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