昨日は6月9日だったのか。「ロックの日」だったのかそーか。
1990年に『ロックの生まれた日』ってアルバムが出たんよね。
当時ぶいぶい言わせていた東芝EMIの所属アーティストが集まってフェスやって(まだフェスって言葉がなくて、「祭り」とか「イベント」とか言ってたな)、それがCDになった。いいアルバムやったよ。
ギリ、渋谷系前夜で、フリッパーズやサニーデイ・サービスはまだ影もかたちもなかったけれども。
いつものバンドじゃなくて、所属アーティストをシャッフルしてそれぞれでバンドをつくったような構成で、普段とは違う組み合わせでね、それがレアですごいよかった。曲もほとんどカバー曲だったけど、それこそ、そのミュージシャンのルーツがそこには反映されていて。
トップの「VIVA」は、伊藤銀次とちわきまゆみとブラボー小松が組んでた。
ちわきまゆみが好きでねー。当時、カルトクイーンやったよね。日本のロックミュージカルのカルト映画『ロッキーホラーショー』の主題歌「サイエンス・フィクション / ダブル・フィーチャー」を歌うちわきまゆみったら、なかったよ。なんかボンテージファッションでエロかったし。
このVIVAでは、ボウイの『ZIGGY STARDUST』、ビートルズの『BACK IN THE USSR』とか、グラマラスな曲をカバーして、グラマラス&デンジャラスなかんじ。伊藤銀次やブラボー小松もひと筋縄ではいかないポップ職人らしい、ひねりの効いたアレンジでやってた。
三宅伸治とプライベーツの手塚稔とティアドロップスの青木真一は、青い三角定規ならぬ、「黒い三角定規」ってガラの悪そうなバンドを組んで、真っ黒でドロドロのブルースをやってた。フォークにならないのが、いいよね。あんなに黒くドロドロしたビートルズの『YER BLUES』なんて、他に聞いたことがない。
高野寛は「ABO」ってバンドを組んで、トッド・ラングレンとか、自身のルーツに忠実なカバーをやっていた。ワシがトラベリング・ウィル・ベリーやロイ・オービソンをちゃんと知ったのは、このときやね。率直にいい曲だと思った『HANDLE WITH CARE』。『I WANT YOU WANT TO ME』はなんと、ハードロックのチープトリックのカバー。でもハードロックって、意外とメロディアスなので、アレンジ変えると良質なポップソングになる。そんなことをこの曲で教わったな。
んで、ちわきまゆみが再び登場して、高橋幸宏+大村憲司+高野寛で「THE TURBO WHEEL CHAIR」ってバンドで。ユキヒロさんのリードでトッド・ラングレンの『I SAW THE LIGHT』やニール・ヤングの『HELPLESS』とかやるわけ。トッド・ラングレンもそれまでちゃんと聞いたことなかったけど、稀代のメロディメーカーだってことをこんとき知ることになる。後年、仲井戸チャボ麗市さんが彼の曲のフレーズをモチーフにした曲を披露したときに、おおっ!と盛り上がれたのは、こんときにトッドを知ったからこそやと思う。
ビートルズの『WE CAN WORK IT OUT』とかもやってたな。さすがにこのメンツだとセンスがいい。
個人的な真打は、山口冨士夫ちゃんとプライベーツの延原達治という新旧やんちゃロックンローラーが組んだ「ひまわり」。もうね、歌舞伎か!ってくらいに、とりあえず定型的に悪そうな奴ら(笑)
ビートルズの『Mr.MOONLIGHT』を二人で歌うんだけど、合ってたり合ってなかったりで、ブルージーでよろし。おまえら、リハやった? 替え歌の歌詞がまた悪くていいのよ。
この次が唯一のオリジナルのというか新曲の『ロックの生まれた日』。ロック、ロック、ロックの生まれた日〜♪って単純なフレーズなリフレインで続くんだけど、ポップだから、すげー盛り上がるし、盛り上げてもいる。
冨士夫ちゃんがね、「そこのストリートスライダーズみたいなにいちゃんも歌え〜!」って叫んでたのは、今でも鮮明に覚えてるな。それ、CDに入ってるし。
で、最後の本当の真打は、キヨシローと細野晴臣と坂本冬美が学生服で登場する「SMI」。のちの名作バンドHISはすでにこのときには完成していて、演歌と細野さんとキヨシローのポップな部分が炸裂して『PURPLE HAZE 音頭』『逢いたくて逢いたくて』『ベートーベンをぶっとばせ』『高校三年生』と、洋の東西を問わずの新旧名作と新曲怪作をひっさげて、大盛り上がり。
もう聴くこともないけど、YouTubeにあるけど、個人的にはエポックメイキングな一枚で、このアルバムで奏でられたカバー曲からその後枝葉を伸ばしていろいろ聞いたし、来るべき渋谷系の深みにハマっていくときに強力な武器だったな。
なんか勢い余っていろいろ書いてしまったけど、1日遅れのロックの日に思ったこと。アルバム『ロックの生まれた日』のこと。
コメントを残す