山科にある、小野小町ゆかりの随心院門跡。
門跡ってのは、皇族・公家が住職を務める寺院のことで、寺格の高い寺院です。そーゆー俗世の家柄から自由なのが仏教のはずだけれども、まあ、いろいろありますわな。
ということで、どことなく貴族趣味が漂っていて、仏教寺院というよりも、セレブの別宅にお呼ばれしたような趣があります。ただし、本物のセレブなので、きらびやかではなくて、質素ななかに気品がある感じ。
まずね、東山を借景にした景色が絶品なのですよ。
門で切り取られた風景は、ほんまに一幅の絵画です。
そして、空間が広々としています。京都のお寺さんは、きっちりと塀をつくって内側に小宇宙をつくるようにして、精緻な自然の模倣、抽象をほどこして、庭園をつくります。でも、山科まで来ると、どのお寺さんも、小宇宙的空間ではなく、広がりや奥行きのある空間をつくりだします。場合によっては塀すらなく、奈良のお寺さん的なおおらかさをたたえた庭になる場合もあるほど。それでも美意識はビシッと貫かれているので、そこはそこで洗練があり、山科のお寺さんの庭は、なかなかおもしろいです。
2月には梅園が、5月にはサツキと、旬の時期には人で賑わう随心院門跡も、今の時期はひっそり。というか、人がいなかったな。
お寺さんはやっぱ、旬を外して、人けの少ない時期に、その空間と時間を味わうべきやと思います。
旬を外していると言ってもね、ほら、ノウゼンカズラが鮮やかなオレンジの花を咲かせ、苔に差し色をしたような風景にだって出会えるわけで。
随心院門跡
京都市山科区小野御霊町35
http://www.zuishinin.or.jp/
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