ネーネーズは那覇の牧志に拠点のライブハウスを持っていて、ツアーやイベントに出るとき以外は、大抵はこのライブハウスで1日3回のステージをこなしている。
ステージとステージのあいだには、客席にやって来て、楽しくおしゃべりをしてくれたりもする。
13年前に宜野湾を拠点としていたときも同様で、変わったことといえば、あのときは3代目だったのが、今は5代目に代替わりしていることくらい。そして、今回の5代目は、久しぶりにレコードを出した。
客席に来てくれたとき、歌ってほしいリクエストはありますか?と聞かれて、ベタだけど、彼女らの代表曲である「黄金の花」を聞きたい、と、おねだりをして、ステージの最後に歌ってくれた。
歌を聞いて、不意に、泣いてしまったな。
「黄金の花」は、島を離れて都会に行っても、素朴で純情な心をおカネで汚さないでくれよ、という歌だ。
僕は島の出身ではないし、もともと素朴で純情な心なんて持ち合わせてないし、おカネで心を汚すこともあれば撥ねつけることもある、都会のど真ん中でかつがつ生きてる人間で、正直に告白しておくと、この歌で歌われる世界観には、一般論では理解できても、個人レベルではまったくリアリティを持つことができない。違う世界の、違う人間の世界だ。
唯一、共感できるところがあるとすれば、
楽しく仕事をしてますか、寿司や納豆を食べてますか、病気のおカネはありますか、悪い人には気をつけて、
といった、親が離れた子を想う気持ちくらいだ。
僕にも、今となっては離れて暮らす子や孫がいるので、そのことは、身にしみる。
でも、それだけだ。
この歌の主旋律に、心が震わされることはない。
でもね、生で、ネーネーズの圧倒的な歌声で放たれた歌を耳にすると、不意に、泣いてしまったのでした。
頭ではなく、生身の身体が、感応したのだろう。
歌の力は、意味を越えていく。軽々と意味を越えて、言葉にできない何者かによって、身体にダイレクトに反応していくのだな。
そんなことを思った夜なのでした。
この歌を歌う彼女たちの振り付けは最小限に抑えられ、ほとんどを直立不動で歌う。彼女たちにとっても特別な歌なのだ。やはり、圧倒的なのだ。
ネーネーズの新しいアルバムを買ってみようと思う。
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