僕、尾形光琳という日本画家が大好きでしてね。
繊細さとダイナミックさが同居していて、なんというか、スケールが大きくて、王さまの芸術とでも呼びたくなるような趣です。
なかでも傑作の誉れ高い「紅白梅図屏風」は、死ぬまでに一度は見たいなあと願ってる作品でして。熱海のMOA美術館にあるんですが、熱海に用事はないし。。
それでもね、この時期ならではのお楽しみがあります。
尾形光琳が「紅白梅図屏風」を描く際に参考にしたという梅、名付けて「光琳の梅」が、下鴨神社にあるんで、2年に一度くらいのペースで、こいつを見にいきます。
糺ノ森を抜けて、本殿横の御手洗川にかかる朱塗りの輪橋(そりばし)のたもとに、その梅はあります。たったの1本の梅の木。
たった1本だけれども、いやいや、艶やかで圧倒的で、素晴らしい梅です。溜め息が出るほどで。
光琳の「紅白梅図屏風」の梅はかなりリアリスティックに描いてあるけれども、この梅をそのまんま模写するように描いたわけではないですね。
眺めていて、そう思いました。
そうではなくて、この梅が持っている本質、それは王さまの梅とでも呼びたくなるような桁外れの艶やかさと華やかさ、それこそを、光琳は屏風に写しとったのだな、と、この梅を見て、いつも思います。
光琳の作品は、どれも、規格外です。繊細さと大胆さが同居するというウルトラCを内包するのが光琳の作品の特徴だと僕は思っているのだけれども、そういう光琳だからこそ、この梅が心に響いたのだな、と、そんなふうに思いましたな。
ところで、この梅を見ていて、あっ!と思ったことがあります。
光琳が描いた「紅白梅図屏風」は、真ん中を大胆に川が流れていて、屏風を左右に仕切ってしまっている構図で、これがね、この場所の地形を想起させるのですよ。
nがYの字になっているのが、光琳の『紅白梅図屏風』です。
きっとね、この地形にインスピレーションを得たのではないか、と、僕は思うのですよ。
大胆さは光琳の代名詞でもあるけれども、まさにね、地形の大胆さがそのまま構図に写し取られています。
そういうふうに考えると、楽しい妄想がとまらなくなります。
下鴨神社
京都市左京区下鴨泉川町59
shimogamo-jinja.or.jp
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