奈良と京都の境の木津・加茂にある浄瑠璃寺。
僕の好きなお寺さん3本の指に入るお寺さん。
名前がね、美しいですね。浄瑠璃のお寺ですからね。
このお寺さんは、西方九体阿弥陀堂と東方三重塔の2つの伽藍で構成されてます。あいだに、浄土式庭園を挟んでます。それだけ。それだけです。
でもね、これがいいんですよ。
どちらも藤原時代建立の建造物で、宇治の平等院と同時期の、古い古い建物です。一度も焼失してないから、正真正銘、藤原時代のものです。
で、西方九体阿弥陀堂。
この、平べったくもスタイリッシュなフォルムを持つ西方九体阿弥陀堂は、文字通り、9体の阿弥陀如来さんを安置するためだけに建てられた建物です。そういう建物としては、現存する唯一のものです。
中に入ると、ずらずらっと9体の阿弥陀如来さんが横並びで鎮座されている風景は、圧巻です。
これはもう、ほかでは絶対に見ることのできない光景で、初めて見た瞬間、ちょっと震えましたよ。
両脇を持国天、増長天、不動明王三尊像の四天王メンバーが固め、9体の阿弥陀如来さんが並びます。
今日は、運良く、秘仏の吉祥天女さんがご開帳。ふくよかな吉祥天さんです。
翻って、浄土庭園の池を挟んで東方に眼を向けると薬師如来さんを祀った東方三重塔があります。
これはね、なかなかありがたい配置ですよ。
少し解説を加えておきますと…、
薬師如来さんは過去世から送り出してくれる仏さんでして、過去の因縁や苦悩を超えて進むための薬を与えてくれる仏さんです。僕たちを送り出してくれるんですが、その仏さんが、太陽の昇る東に安置されています。
一方で、西には9体の阿弥陀如来さん。
阿弥陀如来さんは理想の未来にいて、そこへ向かって進む僕たちを受け入れ、向かえてくれる、来世の仏さん。未来仏なんです。その仏さんが、西方浄土(極楽浄土)のある方向である西に、ちゃーんと安置されている。
仏教では、東は過去(苦悩)、西は未来(理想)ということになっています。この2つの真ん中に位置する浄土式庭園の池は、だから、東を此岸、西を彼岸としているわけです。東の薬師、西の如来、ってわけです。
薬師さんに遺送されて出発し、この現世へ出て正しい生きかたを教えてくれた釈迦の教えにしたがい、煩悩の川を越えて彼岸にある未来を目指して精進する。そうすれば、やがて阿弥陀さんに迎えられて西方浄土に至ることができる、と、こういうストーリーが、このお寺さん全体で表現されているわけです。
彼岸から此岸を目指すんですが、あいだにあるのは、浄土式庭園。
これはもちろん、極楽浄土を表したもので、宇治の平等院にある庭園と同じ意味合いを持ってます。
そして、このお寺さんのご本尊は、東方三重塔に安置している薬師如来さん。薬師仏の世界では、浄土のことを浄瑠璃と表現するので、こちらのお寺は浄瑠璃寺。
ほんまに、ええお寺さんです。大好きなお寺さんです。
関西花の寺霊場にも数えられるほどのお寺さんなので、桜、アヤメ、カキツバタ、紫陽花、桔梗、萩、紅葉…と、季節季節で色とりどりに咲き乱れてくれて、それこそ浄土の世界が展開されます。
浄瑠璃寺
京都府木津川市加茂町西小札場40
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