妙心寺法堂の雲龍図

妙心寺

妙心寺の法堂(はっとう、と読む)の天井に描かれている雲龍図。狩野探幽の筆。
お寺さんの法堂の天井には龍が描かれることが多いですね。
法堂は仏法を説く場所で、龍は法の雨を降らすと言われ、また、龍神は水を司るので防火の意味合いも兼ねて、描かれるようです。
京都だと、天龍寺、相国寺、東福寺、建仁寺、大徳寺、南禅寺あたりがパッと思いつくところで、よくよく考えてみると、大本山ばっかりです。大本山の法堂には雲龍図、みたいな図式があるのかな。
妙心寺にもあります。「八方睨みの龍」。
龍が描かれている外周に沿って堂内を一周すると、どこにいても、龍に睨まれてしまいます。
それだけでなく、一周しているうちに、龍の姿態が変化して、起きて躍動しているはずの龍がいつの間にか仰向けになっています。
とても、不思議。
こういうのを見ると、日本芸術は独特だと思いたくなりますな。
能面や彫刻もそう。
普通、彫刻は動かないもの思われているけれども、彫刻の持つ魅力のいくぶんかは、動くところにあります。
もとより、物体としての彫刻そのものが動くわけではなくて、彫刻に面するとき、観る者が動くことで、彫刻が動きます。
ひとつの彫刻のまえに立つとき、まず、その彫刻の輪郭が眼に映ります。見る者が一歩動くと、その輪郭はたちまち動揺する。生きているように転変し、思いがけなく急に隠れる突起があれば、陰から静かに現れてくる穹窿があります。その輪郭線の微妙な移りかわりに、不可言の調和と自然な波瀾とを見てとって、観る者は、我知らず、彫刻のまわりを一周します。
彫刻の持つ、四面性です。
写真は、彫刻をただひとつの輪郭に固定してしまうので、この四面性を殺してしまいますね。
能は、彫刻が持つ神秘的な四面性を、ほんの少し能動的にしたものだと、僕は思っています。
仏像に代表される日本の彫刻、そして能。
周回することでさまざまに姿態を変える妙心寺の雲龍図をまえにして、ここにも日本芸術の独特なセンスが貫かれているのだなと、少し思ったのでした。
庭も、そうやね。

妙心寺

京都市右京区花園妙心寺町1
http://www.myoshinji.or.jp/

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