長い友人でもあり、TJWK関西の代表でもあるニットアーティストのatricotさんが、初の作品集を出しました。
彼女はかつて、自分の本を出すのが目標のひとつ、と、語っていたので、まずは目標をひとつ達成したということですね。
本をつくる、ということは、長いことその仕事に携わってきた僕が断言するけれども、本をつくるということは、とてつもない大事業です。
本をつくるには、安くないお金と、少なくない手間と、少なくない人が必要になります。
誰かが、お金を出してくれ、手間をかけてくれなければ、本は出ません。
自分の意志だけでは、本は出せないのです。誰かが、これは世のためになるから、世に出さなければならない、そのために、お金も手間も出す、と、思ってくれなければ、本は絶対に出ません。
たとえ出版社の社長であっても、モラルのある社長なら、自社からは本を出さないですね。出版には、そういう気高さがあります。インターネットと大きく、決定的に違うのは、そこです。
本を出せてよかったな、と、心から思いますね。
タイトルは、「ふしぎで楽しい! atricotのトリッキー・ニッティング」です。
出版社からお話があり、この本を出すことが決まったとのことで、トリッキー・ニッティングというコンセプトも、出版社からのリクエストだったとか。
僕自身は、彼女のニットがトリッキーなものだとは思わないけれども、そして、彼女自身も、そんなふうに外から見られていたことは意外に感じているだろうけれども、外の人が、彼女の作品からそのようなテイストを感じとったのだとしたら、それはそれでひとつの評価だし、ひとつの真実です。
長いこと付き合ってきて、彼女自身が向かうべき先を迷い、手探りでやってきたし、手垢のついた言葉を持ち出すなら、彼女は彼女なりの自分探しを長らく続けてきたのだけれども、僕に言わせれば、自分が何者なのか、という問いを自分で考えることほど虚しいことはなくて、そういうことは周囲の人間に決めてもらうのが一番です。
これやってよ、こんなのつくってよ、と、誰かが彼女にお願いするとき、彼女にはそれができるだけの資質があると、その人は思っているわけです。そういうものの総体が、彼女自身の総体でもあり、彼女が何者なのか、という問いの答えでもあります。
今回の出版社の人は、彼女のなかに、「トリッキー」な資質を見いだし、本をつくりたい、それは価値のあることだから、お金をかけて、手間もかけて、世に出したい、と、言ってくれた、ということですね。
本のなかで彼女自身が書いていたけれども、ニットをはじめた当初、その魅力に夢中になりはじめた当初、トイレットペーパーや針金や、いろんなものを糸代わりにして編んでいた、と、彼女は言います。
その自由な発想やパンクなテイストは彼女の魅力のひとつだと僕は思っているけれども、今回の本の主題は、そういうものではないようです。
またいつか本を出すことができるなら、そういう一面が出てるものになればいいな、と、思います。
今、さまざまな場所で出版記念のイベントがおこなわれているようです。
詳細は、彼女のブログを。
http://atricot.jugem.jp/?eid=277
今月は東京でやっているようで、彼女も今日から東京です。
本は、amazonでも売っています。
http://www.amazon.co.jp/%E3%83%88%E3%83%AA%E3%…/…/4766127668
表紙からいろいろトリッキーで、ちょっと笑えるけれども(笑)
コメントを残す